いよいよ本当の最終回のレビューとなりました。
まずは、14話のおさらいが、過去の映像とナレーションを使って行われる。

いづみ「私は誰の道具でもない。協力なんかしない、しないわ!」
ナレ「死んだ筈の石津が生きているかも知れない。そう知らされた時、いづみは自らの力だけで再び戦う決意をし、立ち上がった。いづみの前に立ちはだかる三人のバイオフィードバック戦士たち……そして遂に石津が再びいづみの前に姿を現した」

石津「行動が甘いなぁ、いづみ、」
ナレ「石津は既に国防をその手中にしたことを宣告して去った」
ここから、新撮映像となる。

竜崎「いづみはまだ抹殺できんのか?」
石津「勿論、いづみは抹殺します。私の名誉にかけてね」

ナレ「石津と竜崎の狙いが日本の国防を司る戦略コンピューターであることを掴んだいづみは……」

いづみ「戦い抜いてやる、それが私の全てだから!」
……と思ったら、最後にまた前回の映像と音声が出てくる。14話のラストシーンね。
ここで、すぐOPタイトルに移行。5話と同じく、極めて短いアバンタイトルであった。
OP後、いつものサキの奥の部屋。

部屋の隅でマーコとアイが、肉まんか何かを食べている。

部屋の中央では、いづみ、恵子、佐織、健の4人が、思案に暮れた様子で行ったり来たりしている。
何か一心に考えごとをしているという描写なんだろうけど、4人が4人とも動き回っていると言うのは、いかにも不自然である。
こういう場合は、佐織だけをぐるぐる動かして、他の3人はその場に立つか座るかして考え込んでいた方が自然だ。

ドアの方へ向かって歩いていたいづみ、くるっと振り返り、
「問題は、竜崎のコンピューターが何処にあるのか?」

健、右から左へカメラを横切りながら、
「でも手掛かりがないんじゃあ、しょうがないぜ」

今度は佐織がその健の顔を見ながら、
「分かった!」

そして、健とは逆に左から右へ横切りながら、
「コンピューターを使ってぇ、逆に石津たちのコンピューターを辿れば良いんです。佐織って、てんさぁ〜い!」
自画自賛する佐織に、マーコとアイが「ふぅーん」と感心しながら頷くのが可愛いのである。
可愛いのであるが、残念なことに、この二人もこのシーンが最後の出番となってしまう。
祥子ほどではないが、どちらもなかなか可愛かった。ご苦労様でした。
くどいようだが(と前置きするのもくどいが)、打ち切りにならなければ、この二人にスポットが当たったエピソードなんかが作られる可能性もあったんじゃないかと、28年経ってから悔やんでも悔やみきれない管理人であった。
仮に51話くらい放送されていたら、詳細レビューを自分のライフワーク(笑)にしても良かったのに。
閑話休題。

その横から恵子が顔を出し、
「そんなことが出来れば、悩んでないの!」

マーコ&アイ「そーそー!」
主体性のカケラもないマーコとアイであった。
佐織「でもぉ……」
藤原「いや、できるかも知れんぞ!」

その声に振り向くと、藤原の姿があった。
藤原「俺の知り合いに出来るかも知れない奴がいる」
藤原の意外な発言。
管理人、最初見た時、この期に及んで新キャラクターが登場するのであろうか? と、一瞬考え込んでしまった。
極端に登場人物が少ないこのドラマ、今までそんな設定のキャラはいなかった筈である。
それと、見過ごされがちだが、藤原がこの溜まり場に足を踏み入れるのも、これが最初(で最後)だったんだよねえ。

次のシーンでは、早くもいづみたちはその「知り合い」のところへ移動している。
いづみのアップにサブタイトルが表示されるのだが、DVDのメニュー画面でそのタイトル「セーラー服戦士の伝説」を見た時、(2話延長されたということは既に知っていたので)てっきり総集編なんだろうとがっかりしていたら、みっちりと中身の詰まった新作だったので嬉しかった記憶がある。
なんか、いかにも、総集編っぽいタイトルじゃない?
それと、84年の「スケバン刑事」から始まるフジの女子高生バトルものの最後のエピソードを飾るに、ふさわしいタイトルでもあったような気がしている。
無論、この後も「花のあすか組!」なんて言うガールズバトルドラマも作られているのだが(マーコの助川ユキさんもゲスト出演している)、この作品が1クールで打ち切られたことが、このジャンルの終焉を象徴しているように感じられるのだ。

カメラが引くと、他の三人の姿が見える。
恵子と佐織、「うまく行くのカナ?」と言うように顔を見合わせる。

で、彼らの視線の先にいるのは、なんと、藤原と、むーちゃんなのだった!
まさかこの切羽詰った段階で、彼女のようなチョイ役が再び登場するとは夢にも思ってなかったので、完全に意表を衝かれた管理人であった。
そう、「コンピューターに詳しい知り合い」と言うのは、むーちゃんこと武藤萌だったのだ。
いくらなんで安直過ぎる……と言いたいが、急遽作られたエピソードなのだから、あまりしつこく突っ込まないようにしよう。
劇中、具体的には6話の冒頭だが、むーちゃん、藤原に頼まれていづみの犯罪歴についてコンピューターを使って調べたことがあるのだ。その時は何の成果も得られなかったが、そのことは石津側にも筒抜けだった。
石津、まさかその時のハッカー(笑)によって自分たちの計画が土壇場でひっくり返されることになろうとは、夢想だにしなかっただろう。

藤原「頼むよ〜ええっ? チッ、いいよ……」
むーちゃん、最初は拗ねたように椅子を回しながらそっぽを向いていたが、藤原が耳元に顔を近付けて何か囁くと、

急に目を輝かせて、藤原の顔を見る。
指を広げているのは、「5万円?」と確認しているのだろう。
藤原「おおー」
そろそろ怒られそうだが、もし打ち切りにならなかったら、藤原とむーちゃんがちょっと良い感じになる……なんて展開もあったかも知れないなぁ。

武藤「その場所を捜せば良いのね」
藤原「そうそう、頼むよ」
餌をちらつかされた犬のようにコーフン気味に藤原に念を押すむーちゃん。

藤原、持っていたファイルをその手の上に乗せ、いづみたちに親指を立てて見せる。

いづみ「どうしたの?」
藤原「うん?」
藤原、いづみにも耳打ちしてこそこそ話す。

いづみ「買収ーっ?」
素っ頓狂な声を上げるいづみ。
買収と言う言葉は適切ではないが、要するに金で吊ったらしい。
さすがに5000円で、むーちゃんがあんなに目をキラキラさせるとは思えないので、5万円が妥当なところだろう。
もっとも、6話の例でも分かるように、藤原がこの後、実際に5万円を支払ったかどうかは定かではない。
恵子「えっ、この人にできんの?」
みんな、疑わしそうに自分たちとさして年齢の違わない婦人警官を見遣る。

武藤「できるわー、国防省の地下コンピューターが竜崎のコンピューターに繋がれていれば、国防省の回線を排除して残る回線を見付け出せば、その場所が分かるわ!」
むーちゃん、自分の言ってること分かってるんですか?
この顔、どう見ても分かってないんだけど……

恵子「何だ、簡単なんだ」

武藤「そうでもないわよー、一週間かかっても見付からない時だってあるのよー」
佐織「それでー、どうするんですかー?」

武藤「地域を特定して、ハッカー仲間しか知らない、ダーティーダイヤルプログラムに掛ける。実は、私も時々、こっそりやってるんだ」

藤原「ワオッ!」
藤原、(ほんとは意味が分かってないのだが)思わず手を広げて声を上げる。

恵子「ダーティーダイヤル?」
武藤「コンピューターが自動的に一定区域の電話番号を全てダイヤルする。何処かのコンピューターに繋がるまで順に電話を掛け続けるのよ。後は、パスワードで逆に何処のコンピューターか、特定すればいいだけっ」
藤原「そう、そう言うこと、ねっ」
くどいようですが、
むーちゃん、言ってる意味分かってるんですか?
多分、この場にいる全員、スタッフも含めて誰も意味が分からなかったんじゃないかなぁ?
いずれにせよ、むーちゃんはパソコン通信が趣味で、警官の癖にハッカーまがいのことをして遊んでいるらしい。
この設定、やっぱり急遽考えられた設定かな。
ほんとは、別に凄腕のハッカーなんてのが終盤に登場する予定だったのかも知れない。
この後は、パソコンを使うむーちゃんと、それを見守るいづみたちの様子をイメージ的に描くシーンとなる。

画面が小さくて分かりにくいが、プログラムが電話番号に片っ端から電話をかけ、「Miss Operation」と表示されて行く。
つまり、それらはコンピューターとは繋がってないと言う意味なのだろう。



作業を見守るいづみたち。

結構な時間が経過し、佐織がコーヒーを入れたりしている。

やがて、むーちゃんが「出たわ!」と大声を上げる。たちまちみんな眠気をぶっ飛ばして集まってくる。
藤原「えっ? でかした!」

どうやって特定したのか、具体的な描写はないが、モニターには「東京湾第1海海堡」に竜崎の組織のメインフレーム(要するに基幹コンピューターのようなもの)が存在していることが示されている。
第1海堡は、明治・大正に日本軍によって作られた人工島の海上要塞であるが、終戦後は使われていない。
後に出てくる、猿島の近くにあるらしい。

いづみ「第1海堡……」

藤原「いづみ、表に東大寺の車が停めてある。行け、俺がしてやれんのはここまでだ」

いづみ「藤原さん……」
藤原「……」
初めて(だっけ?)、藤原のことをさん付けするいづみ。藤原、無言で頷く。
2話でのあのあの刺々しいやりとりが嘘のように和やかな雰囲気であった。
と言うか、藤原、1話のほとんどヤクザみたいな暴力刑事とは別人のような変わり様である。
この辺の和解や変化も、ほんとはもっと時間をかけて自然にやりたかったんだろうなぁ、我妻さんは。
と言う訳で、愛しのむーちゃんの出番もこれで終わり。好きだったよ、むーちゃん!
ちなみにむーちゃん、翌年の「花のあすか組!」では、

紅「我々の支配に抵抗する者は、いじめていじめていじめ抜き、油虫として吐き捨てよ!」
などと言うように、割と弾けてらっしゃいました。

次のシーンでは、早くも東大寺の運転する車で、いづみたちが東京湾へ向かっている。

後部座席の、恵子、佐織、健。
落ち着いて考えれば、いづみはともかく、彼らがこんなことをする義務は全く無いんだけどね。
なんで警察官の藤原が来ないで、学生の彼らが行かなくちゃいけないのだろう?
その車をゆくてを、早くもトラックが塞ぐ。
東大寺、慌ててかわし、急ブレーキを掛ける。

東大寺「行って下さい!」
……いや、お前も来んかい!
とにかく、最後に台詞があって良かったねの東大寺を演じたのは原島達也さんでした。

車から降りて走り出す四人。
この辺から、挿入歌「スカイバレー」が流れ出す。

トラックに追われながら、柵の間を駆け抜けるいづみたち。
健だけ、ハードル走のように飛び越えているのがちょっとカッコイイ。

トラックは、カメラ右手に進んで停まるが、その荷台から二台のバイクが飛び出す。

バイクは柵の間を走り抜けて、しつこくいづみたちを追い掛ける。
いづみたちは倉庫の間を走っていたが、

先回りしたバイクが、目の前の角から飛び出して、彼らの前を翔けて行く。

この時、一瞬、バイクのひとりがあの懐かしいバズーカ砲を携帯しているのが映し出される。

廃工場の敷地内をひたすら走るいづみたち。

佐織、思いっきりコケる。

バイクは構わず突っ込んでくる。
いづみ、慌てて駆け寄り、佐織の体を裏返すようにして道の端へどかす。

直後、バイクが猛スピードが走り抜けて行く。
8話のバイクアクションを髣髴とさせる、なかなか気合の入ったシーンである。
おまけの最終回ながら、なかなか良心的に作ってあるんだよね。ちょっと感動しちゃう。

が、なにしろバイクなので、小回りが利かず、余裕で逃げられる。

倉庫の中に逃げ込み、急いでバリケードを築く。

バリケードの下からヒョイと顔を覗かせる四人。
四人揃ってのアクションシーンは、無論、初めて。

が、すかさず敵のひとりがショットガンのようなものを構える。恵子、びっくり顔になって身を隠す。

弾が直撃し、バリケードがたちまち炎に包まれ、その勢いで四人が吹っ飛ばされる。
ここも、全員俳優本人が演じてるんだと思う……。
一番緊張していたのは、こういうシーン、実は初めての湯江さんだったかも知れない。

バリケード、あっさりと崩れ落ちる。
敵が撃ったのは、グレネードランチャーだったのだろうか?

足を押さえて倒れる健、腕を押さえて倒れる恵子。
健の体の下には、親切にも土嚢のようなものが座布団のように敷いてある。

佐織「健! 恵子さん!」
思わず叫んで二人に駆け寄ろうとする佐織。
佐織が健のことを名前で呼ぶのはこれが初めてだ。……にしても、呼び捨て?
どう見てもこの中で健が最年長なんだけどね。

しかし、その間にバイクが突っ込んでくる気配に、いづみが佐織の襟を掴んで引っ張り、投げ飛ばすように引き戻す。

バイクはそのまま倉庫の中を突っ切って行く。

反対側へ抜けたバイクを勇敢にも追いかけるいづみ。

サバイバルソーを取り出し、チェーンを引っ張る。

リングを掴んで、反対側のリングを飛ばす。

チェーンが敵のひとりの首に巻きつく。
いづみ、思いっきり引っ張って、敵をバイクから引き摺り下ろす。

男がバイクから落ちると、

バイクが美しい爆発を起こす。
おまけエピソードなのにこんなに気合の入ったシーンを見せられると嬉しくなるが、こんなに簡単に爆発するんじゃ、怖くておちおちバイクに乗れないよね。

別のバイクが真っ正面から向かってくるが、いづみはその場で跳躍し、交差しながら右腕でラリアットのように男の首に引っ掛け、

そのまま男の体をバイクごと引き倒す。
無論、いづみもその場に仰向けにひっくり返る。
さすがにこれはスタントであろうが、これなんかもなかなか危険なアクションだよね。

転倒した拍子に、チラッと見えたバズーカ砲が転がる。

男はそれでもまだ立ち上がるが、いづみは尻を付けたまま、蹴りを放って男を転がす。

立ち上がると、パンチを食らわして大人しくさせる。

そして、思い出したように慌てて恵子たちのところへ走る。

いづみ「恵子!」

いづみ「大丈夫?」
いづみ、まず恵子の体を抱き起こす。痛むのか、一瞬、恵子は顔を歪めるが、

強いて笑顔を作って顔を起こす。
恵子「そんな顔しないでよ、死んだ訳じゃないんだからさ」

いづみ、無言で制服のスカーフを引き抜くと、傷口を縛る。

健「やられちまったよ、あっ、ああ、いってーっ」

佐織「動いちゃダメです」
立ち上がろうとして、痛みに顔をしかめる健に、佐織が寄り添う。

恵子「行きなよ、いづみぃ……」

恵子「私たちのことは良いからさ」
いづみ「いけない、このままじゃ……」
恵子「ごちゃごちゃ言わないでよ!」
恵子、足で地面を擦るようにして、いづみから体を遠ざける。
恵子「行けったら、行けって……これはいづみだけの問題じゃない、そう言ったでしょ。愚図愚図してると取り返しのつかないことになっちゃうよ」
健「恵子の言うとおりだぜ、いづみ、お前がやんなくて誰がやるんだ?」
いづみ「健……」
恵子「いづみ、私たちの分も頼んだわ」

繰り返し説かれて、いづみも遂に折れる。
いづみ「ごめん……」

恵子、潤んだ瞳で顔を横に振る。

いづみ「佐織、恵子と健のこと、頼んだわ」
いづみ、佐織にそう告げてから立ち上がり、ひとりで出発しようとする。

と、佐織も走り出し、いづみの前で「とおせんぼ」をする。

佐織「行かせません!」

佐織、そう一声叫んでから、しゃがんで自分のスカーフで、いづみの左手の傷に包帯のように巻く。
佐織「このまま行けば、いづみ先輩が、いづみ先輩が死んじゃうもん!」

いづみ「手を離して……」

いづみ「行かせて、最後までやらせて! ねえ、佐織?」
いづみ、佐織の視線をさけながら言ってから、改めて佐織の顔を見詰めて訴える。

佐織「いづみ先輩……」
いづみ「大丈夫! 必ず帰ってくるから」
立ち上がった佐織の肩を叩き、笑顔を見せるいづみ。
後ろ向きのまま、恵子が「いづみ!」と呼ぶ。

振り返ったいづみの目にも、涙が滲んでいた。

恵子、立ち上がり、自分のスカーフを引き抜いて、

恵子「セーラーはこれがないとね」
と、いづみに差し出す。

いづみ、涙を溜めたままニッと笑う。
いづみたちの熱い友情を前に、健もちょっとだけ、泣きそうな顔になる。

佐織が、いづみにスカーフを巻いてくれる。
恵子「いづみぃ、このスカーフ、絶対返しに来てね」
いづみ、力強く頷くと、踵を返して歩き出す。

佐織「あたしのも返しに来てねーっ!」
つまり、
いづみのスカーフ→恵子の腕の包帯
恵子のスカーフ→いづみの制服のスカーフ
佐織のスカーフ→いづみの手の包帯
と言うように、それぞれのスカーフが大事な人の体に結び付いていると言う訳だ。
健だけ仲間外れなのがちょっと悲しい。

いづみ、倉庫から出ると、倒れていた敵のバイクのグリップを掴み、引っ張り起こす。

そのままいづみがまたがろうとした瞬間、スカートの中にチラッと、ほんとにチラッとだけ下着のようなものが見える。
「いづみ」、女優自身が演じるアクションシーンが多い割に、パンチラはほとんどない作品だった。
そこだけがこの素晴らしいドラマの残念なところである。

ややしつこく佐織が付いて来て、地面に落ちていたバズーカ砲を拾い上げ、
佐織「いづみ先輩! これでおもいっきし、撃ってください、私にも聞こえるように……」

いづみ、笑顔でそれを受け取り、キックしてエンジンをかけながら、サックの中に入れる。
その砲身には1話でいづみが使ったものと同じく、「fire and forget」と書かれている。
無論、いづみが使ったものと同一ではないだろうから、組織のバズーカ砲にはみんなそのフレーズが書かれているのかも知れない。……ま、番組的には同一なんだろうけどね。

いづみ、佐織を残して猛スピードで発進する。
佐織「しっかり撃ってきてくださいね〜」

エンジン音を響かせながら、誰もいない道を突っ走るいづみ。
一応、いづみが乗っているような感じだが、実際の走行シーンはすべてスタントだろう。
五十嵐いづみさん、趣味がバイクらしいので、乗れることは乗れたと思うが……。

視界に電話ボックスが見えると、いづみはスピードを落とし、

ボックスに入り、緊急通報用ボタンをプッシュする。

いづみ「すぐに救急車を! 場所は国道16号線、荒浜の廃工場です。急いでください! お願いします」
良く考えたら、いづみが電話を使うシーンって、これが初めてか?
……と言うより、電話そのものがあまり出てこないドラマだったな。
せいぜい、石津、石津の部下、竜崎が連絡に使ったくらいか?
そうそう、8話で依頼の電話がサキにかかってきたことがあったっけ。

いづみ、受話器を置くと、ガラスの壁に背中を預ける。
思い詰めた表情で「みんな、ありがとう……」

そのまま尻を落とし、
いづみ「もしも、私が帰らなくても、気にしないで」

いづみ「楽しくって、いつも良い天気みたいな……そんな日がたくさんあるように……」

アングルが変わると、いづみの頬を一筋の涙が落ちているのが見える。
いづみ「みんな……」

それでやめときゃいいのに、さらに、埃だらけのガラスに指でこんなことを書かせるスタッフは、羞恥心と言うものを知らないのだろうか?
しかし、この突然の独白シーン、かなり唐突に感じられる。
あるいは、最初から我妻氏が終盤に入れようと思っていたシーンだったのかも知れない。

しばしの感傷に浸ったいづみ、ボックスから出て再び横倒しになっているバイクを起こそうとするが、

左側からスッと車が入ってくる。

ここで再び藤原が登場。
うーん、しかし、さっき「お前にしてやれるのは〜」とか言ってたんだから、ここは別に藤原をまた出す必要はなかったと思うけどね。

かつてアイスドールと言われたいづみが、初めて人に見せた泣き顔だったかもしれない。
いづみ、藤原を見ると、拳で涙を拭う。
藤原「我慢するこたぁねえ、泣きたい時は泣け」

次のシーンでは、早くもいづみを助手席に乗せ、藤原が車を走らせている。
ちなみにこの車、東大寺が乗っていたものと同一なのだろうか? 送り出した後、藤原が気になって追いかけてきて、東大寺を見付け、13話のように車を拝借していづみを追ってきたのか?
そしてこのタイミングで、「JUST FOR LOVE」のイントロが流れ出す。

藤原「お前の戦いに協力するつもりは毛頭ない、お前はお前の好きにすればいい。俺は俺の好きにするから」
いづみ「失業するわよ」

藤原「どの道、お前に死なれりゃ俺の追い掛ける相手もいなくなる。ふっふふふっ」
ジェスチャーをまじえて喋る藤原。

いづみ「長い追いかけっこだったわね」
藤原「ああ……」
いづみが笑顔で言うと、藤原も笑顔を見せる。
多分これも、脚本家が温めていた殺し文句だったのではないかなぁ?
予定通り1年間、ドラマが続いた後なら、このやりとりも感慨深い物になっていたかもしれないが……
それに、藤原が本気でいづみを追いかけようとする姿勢を見せていたのは、せいぜい5話くらいまでだから、放送分だけ振り返っても、いまいちピンと来ない台詞なんだよね。、

やがて車は港へ出る。
二人は車を捨て、停泊しているボートへ走る。

いづみ、手早く後方の艫綱を解き、バズーカを小脇に抱えてボートに乗り移る。

前側の艫綱を解いて、ボートに投げ込む藤原、当然、自分も乗り込むつもりだったが、その前に舷側が岸壁からスーッと離れて行くのを見て驚く。

藤原「いづみ!」
いづみ「ごめん、藤原さん」
藤原「いづみーっ!」
いづみ「ひとりで行かせて」
藤原「おまーなー」
いづみ「さようなら!」


いづみ、ラダーを握ると、そのままボートを発進させる。
これは船内に操縦士がいて、そちらで操作してるんだろうね。
ボートの動かし方とかさっぱり分からんので、こういうシーンは苦手である。

藤原「バカヤロー、やっと普通の高校生になれたんじゃねえか!」

いづみ、悲しそうな目で藤原を振り返るが、そのまま白い波を残しながら沖へ出て行く。

藤原「バカヤロウ、命を粗末にしやがって、本物の馬鹿だっ! お前はっ」

藤原の罵声を背中に受けるいづみの目には、涙が滲んでいた。
……しかし、藤原はいづみと一緒に海堡へ行こうとしていた訳で、置き去りにされたからって「普通の高校生に〜」「命を粗末に〜」と言うのは、この状況ではちょっとそぐわない嘆きのようにも聞こえる。
一方のいづみとしては、最初から藤原を巻き込むつもりはなかったので、予定の行動だったのだろう。
それに、この段階においては藤原は足手まといにしかならないことも冷厳な事実である。

なお、正面からの映像を見ると、中に人がいるのははっきり分かってしまうのだった。あらあら。

ほどなく、第1海堡が見えてくる。……と言っても、実際にそこで撮影は出来ないので、例によって猿島である。
猿島とさほど遠くないところに、本当の海堡があるらしいのだが。

時間もないことだし、いづみは何の妨害も受けずに上陸し、内陸部に踏み入る。
あ、今気付いたんだけど、さっきのボート、誰のだったの?
……ま、いいか。

フランドル積みされた煉瓦のトンネルを抜けるあたりで、「JUST〜」が終わり、鳥の鳴き声がしきりに聞こえる、ちょっと不気味な雰囲気が迫ってくる。

バズーカを持ったまま少し開けた場所へ出ると、前回のバイオフィードバック三人組がいづみが来るのを待っていたかのように登場する。
すかさずバズーカ砲を撃てば、勝てそうな気もするのだが……

三人は即座にバイオフィードバックを発動させる。
いやー、何度見ても緊張感を削がれる顔だ。
三人は一列横隊のまま、いづみに向かって突進してくる。

ガチャッとバズーカ砲を構えるいづみ。

ここで、女戦士が両手を左右に伸ばすのだが、
まるで「あかん、バズーカ持ってる! バズーカ!」と、いづみのバズーカ砲に気付いて慌てて仲間を止めようとしているように見えなくもない。

実際は、自分の腕を二人に預け、二人に抱えられるようにして強力な蹴りを放つと言うシーンだったのだ。

いづみ、まともに蹴りを受けて、そのまま背後の空中まで吹っ飛ばされる。
背景が暗いので分かりにくいが、ここはちゃんと五十嵐さんがワイヤーで吊られているのだ。
ここまで良心的に作ってあると、ちょっと感動モノだね。

いづみ「私たちは敵じゃないわ……私たちの敵は、石津よ!」
いづみ、胸を押さえて立ち上がりながら、三人に訴える。

いづみ「あなたたちが倒さなきゃいけないのは石津よ! 私たちは仲間よ!」
いづみの必死の叫びだったが、

三人は全く聞く耳を持たず、ずんずん向かってくる。

いづみ(マインドコントロール? 心まで奪われた、悲しい戦士……彼らにはもう心は通じない)
いづみ、無駄な殺生はしたくないと、彼らを説得したかったのだが、諦める。
考えたら、いづみもマインドコントロールを受ける直前に逃げ出したんだよね(ほとんど仮面ライダーだ)。
マインドコントロールされたいづみ、なんてのも見たかった気もする。

このタイミングでいづみもバイオフィードバックを発動させ、髪が逆立ち、いつもの映像演出が行われる。
さすがに、ここでは石津の「バイオフィードバック、戦う意志が〜」と言う決まり文句はない。

三人はさっきと同じ攻撃を仕掛けてくるが、いづみ、今度は真正面から蹴りを受け止め、足を掴んで宙へ放る。

ついで、一方の敵に鋭い回し蹴り。

もうひとりの男の兵士の胸に、エルボー。

女兵士の胸に、手刀が途中で拳に変わると言う、このドラマではちょくちょく見られる技を撃ち込む。
これで、女兵士はあっさりノックダウン。
そして膝蹴りで男兵士のひとりを倒してから、

残る男兵士の首を持つと、ブレンバスターのようにその巨体を逆さまに持ち上げる。
無論、これも兵士の体を吊ってあるのである。

いづみ、そのまま男の体を投げ出すように、頭から地面に叩き付ける。
叩き付けるというより、捨てるというような投げ方だったが、ゴンッと重い音がして、兵士はそのまま倒れて動かなくなる。
最後に見せたいづみの桁外れの強さを存分に描いた切れ味の良いアクションシーンであった。

いづみ、バズーカ砲を拾うと、彼らの安否も確認せず、走り出す。
いづみ、心までなくした彼らを救うのは「死」だけだと割り切って、殺すつもりで戦ったのだろう。
もっとも、さすがにあれくらいでバイオフィードバック戦士が死ぬとも思えないので、三人とも命は取り留めたのではないだろうか。
いよいよ最後のBパートである。
いづみ、難なくアジトへの入り口へ到達する。

見張りをしているのが、アサルトライフルを持った兵士二人だけと言うのがビンボーで悲しいが、

いづみの姿を見た途端、軽い音を立てながら銃を落とし、自分から両手を上げるのも、かなり情けない。

もっとも、いづみにバズーカ砲の砲口を向けれているので、止むを得ない反応だったかも知れない。

それでも、そのまま逃げ出さずに、隙を見ていづみに向かってくるところなどは勇敢だったが、あっさりバズーカ砲で殴られて昏倒する。

いづみ、ドアのノブに一旦手を掛けるが、

左手に巻かれたスカーフに気付いて、引っ込める。
自分の左手に視線を落としてから、制服のスカーフにも触れる。
左手のスカーフは佐織から、胸のスカーフは恵子からそれぞれ貰った、いや、思いを託されたものだった。
いづみ(恵子、佐織ぃ……)

アジトの奥では、竜崎が部下から電話で報告を受けていた。
竜崎「いづみが? ……そうか、分かった。石津君、君に最後の仕事をして貰おう」

いづみ(石津麟一郎、今度こそ必ずお前を倒す、たとえ、この命に換えても!)

改めて決意を固めるいづみ、漸くドアを開けて、内部に踏み込む。
無論、ここからは、猿島とはまったく関係のないセット撮影に移行しているのだ。

が、いづみが少し階段を降りると、早くも石津おじさんの姿が見切れてしまうのが、ちょっと笑ってしまうところ。
さすがに、あのドアの真下がこうなっているとは思えないので、ドアを開けて、通路を進み、何人かの敵を排除してからのことなんだろうけどね。

石津「よくここまで辿り着いたな、いづみ、誉めてやろう」

いづみ、階段を降りると、無言でバズーカを構える。

石津「お前の手を煩わせるまでもない」

石津、抽斗を開けると、機械のスイッチを入れる。

と、パソコンのモニターに、「5:00」と言う数字が出て、カウントダウンが始まる。
タイマーと交互に、「DANGER」と言う文字が表示され、警報音と一緒に、「緊急事態発生、緊急事態発生、至急避難して下さい」と、緊張感のカケラもないコンピューター音声の警告が響きわたる。
石津が自爆装置を起動させのだ。

しかし、それに合わせて施設自体がぐらぐら揺れだすと言うのは、ちょっとどうかと思う。
石津「竜崎は既に自分の車に仕込んだマイクロコンピューターに何もかも移し変えた。ふっ、この要塞も既に用済みだ」

いづみ、バズーカを降ろすと、周囲に目をやる。

石津「今頃は政府を脅しにいく準備をしているだろう。あの男の求めているのは権力と金だけなのだからな」

いづみ「同じよ! あなたも、あの竜崎って男も!」
いづみ、改めてバズーカを構えてから、叫ぶ。

石津「違う!」

石津、全力で否定してから立ち上がる。

ここで、パネルが火を吹き、

なにやら得体の知れない装置が発火するカットが挟まれるが、これは、いかにも別の番組から持ってきた素材のように見える。実際のところは良く分からないが。

石津「バイオフィードバックはお前には過酷なことだったかも知れん」

石津の台詞が終わると同時に、背後のパネルが激しく火を吹き、火花が石津の体にまで飛んでくる。
普通だったら、
石津「ひょっ? おーっ、びっくりしたぁーっ!」と、とりあえず驚くところだが、

石津「……私の勝手な夢だったろう」
と、何事もなかったように話し続けるのが、いかにもドラマである。
石津「だが、この国の将来の為には必要なことだったのだ。だが、竜崎にこの国を思う気持ちなどはない、夢などはないのだ」

いづみ「そんなことを言うなら、何故自分の手でやろうとしないの? 勝手な戦いに若者たちを巻き込んで、たくさんの血を流させて!」
いづみ、バズーカを持ったまま、反論する。

いづみ「憎いわ、あなたが、あなたたちが!」

改めてバズーカを構え、石津に向けるいづみ。
石津(やべぇ……)

が、背後で爆発が起き、ドアが吹っ飛ぶ。
いづも、石津も、衝撃で体勢を崩す。

ここでまた、あの変な装置の爆発シーンが挿入される。
うーん、と言うことは、これは借り物じゃなくてちゃんと新たに撮ってるのかなぁ? むむむ。

タイマーは2分を切り、「緊急事態発生……」と言う声が響く中、無言で対峙する二人。
やがて、建物が崩落し始め、頭上から大量の埃が落ちてくる。

石津、ここで初めて、サングラスを外し、ロウで潰されたような自分の両目をさらす。
そう、石津は13話で炎の中に叩き込まれた際、両目を失明していたのだった。

いづみ、驚いてバズーかを下げる。
なんか、いづみ、バズーカを上げたり下げたりしてるような感じだね。

石津「夢を実現させる為には、犠牲も必要だ。いづみ、お前にもいつかそれが分かるだろう……生きることは戦いなのだ! 自由が、平和が、愛が欲しければ、戦いとれ! それが私のやり方だ」
石津、杖の先をいづみに向ける。
石津おじさん、渾身の演説であったが、

いづみ「違う、間違ってるわ!」
少女にあっさり否定される。あらあら。

いづみ「小さな世界を……それを守って、戦いなんか求めずに生きれるわ!」

どこまでも続く平行線。
「問答無用」とばかりに、石津は引き金を引くが、筒のような物がスポコン! と飛び出ただけだったので、大笑い。
これは、石突のカバーを射出しただけなのだが、このシーンは要らなかったんじゃないかなぁ。

石津「笑わせるな!」
それに続いて、石津が発砲する。

目の見えない石津の放った弾は、いづみの左腕を掠める。

石津「お前がそう思うなら、それを戦い取れ、どんな時代でも強いものは弱いものを滅ぼす、それがイヤなら、戦え!」

石津、ほんとは目が見えてるんじゃないのかと言うような正確さで、今度はいづみの右足に命中させる。
いづみ、思わず膝を折る。

残り1分30秒。
石津の背後で、再び大きな爆発が起きる。
……やっぱり、起爆装置がカウント中なのに、爆発が起きたらイカンと思うんだけどね。
映像的にも、13話のラストとますます似てきてしまうし。

石津「さあ! 何故撃たん? 俺を倒してみろ!」
石津、いづみに殺されるのを願っているように、挑発する。
いづみ、バズーカを抱えてよたよたと近付くが、なかなか撃とうとしない。
……まぁ、この状況で撃ったら自分も巻き込まれる可能性があるしね。

ここで、あの杜撰な形の日本地図のパネルが派手に爆発する。

続いて大量の土砂が落ちてくるが、台の右側から、明らかに人為的にガスが吹き出されているのが見える。

石津「ここは、木っ端微塵に吹っ飛ぶぞ、俺を倒さん限り、こっから出ることは出来んのだ。竜崎の野望を打ち砕くことは出来んのだ!」

石津、そう言うと、杖でいづみをぶん殴る。

いづみ、壁にぶち当たって尻餅をつく。
いづみ、なぜか急に戦意を無くしてしまったようにも見える。

石津「覚えておくが良い、いづみ、自らの手で戦い取ったものだけが、本物だということを!」
「戦い取る」と言うフレーズが好きな石津おじさん、何回繰り返せば気が済むのだろう?

いづみ「あなたを、竜崎を、必ず倒す!」
いづみはいづみで、「倒す倒す」と言いながら、なかなか実行しない、言うだけ番長に成り下がっていた。

石津「感じるぞ、お前の力を、お前の怒りを! 私の計画は潰れたが、いづみ、お前だけが唯一残された私の夢だ! 行け! 行って竜崎を倒すのだ!」
これが、石津おじさん、ほんとに最後の最後の台詞となります。
なんだかんだで、石津は魅力的なキャラだったね。
結構体を張られて演じられた渡辺裕之さん、ご苦労様でした!

石津、そのまま奥の部屋に入る。一瞬後、激しい爆発がドアを吹き飛ばし、石津の死を告げる。
やはり、これは、石津が自爆したことを表しているのだろう。
当初の予定では、もっと派手な死に方になるんじゃなかったのかなぁ?
(13話のように一旦倒されるが)究極のバイオフィードバック戦士になって甦り、いづみと死闘を演じる、とかね。

続けて、ますます大きな爆発が起きる。

一応、猿島の施設から煙がポンッと出て、ドアが吹っ飛ぶシーンもある。

だが、それに続く爆発は、「スケバン刑事」1作目の最終回の、サキとレミとの最終バトルの時の映像である。

最後の爆炎は、「宇宙刑事シリーズ」で使われている爆発ショットであろう。

次のシーンでは、竜崎が後部座席で葉巻をくゆらせている。
竜崎、石津が見抜いていたように、本気でクーデターを起こそうなどと考えていた訳ではなく、国防システムをジャックし、それを材料にして政府を脅し、なにがしかの金や地位を得るのが目的の小悪党だったのだろう。
しかし、だったら何故、本気で国を憂える石津が最後まで従っていたのか?
まぁ、竜崎が石津を利用していたように、石津も竜崎を利用しようと考えていたのだろう。
13話で失明さえしなければ、最終的には竜崎を裏切って、組織を乗っ取っていたのではないだろうか?

ところで、今回チェックして初めて気付いたのだが、その運転手が、石津の良き腹心だった滝沢だったんだよねー。
てっきり、13話でお役御免になったと思って勝手に「ごくろうさま」と言っちゃったが、最後の最後に出番が回って来たのである。でも、個人的にはあのままいなくなった方が、石津の忠実な部下と言うイメージのままだったのにと、少し残念だ。
まぁ、制作サイドからすれば、このシーンの為だけに別の俳優を使うより、滝沢を再登場させたほうが手っ取り早いと考えたのだろう……か?
ほんとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーに、くどくて申し訳ないが、打ち切りにならなければ、滝沢も、石津の部下でありながら、竜崎に通じていたスパイ的なキャラだった、みたいな味付けも可能だったかも知れない。

とにかく、前方に、女子高生のような姿がドサッと投げ出されるのを見て、滝沢は急ブレーキをかける。

竜崎も、「どったの?」と言う顔で、前方を窺う。

長い髪がバサッと垂れて、その顔は見えなかったが、

EDタイトルバックと同じく、シャンプーのCMのような動きで、いづみがパッと顔を上げる。

湧き上がる怒りにブルッと体を振るわせるいづみ。
……と言うか、単に寒かっただけじゃないか、と言う気もするのである。
撮影は多分、1月下旬か、2月初旬だと思うから、そりゃ寒いわな。
とにかく、このタイミングで、OPの時のBGMが流れ始める。

さすがの竜崎も、石津と一緒に瓦礫の下になったと思っていたいづみの出現に、愕然とする。

しかも、いづみがバズーカ砲を構えているのを見て、青褪める。
いづみが最初に使ったバズーカと同じ文字が書かれているが、その横に、何かを消したような跡が見えるんだよね。
と言うことは、1話で使った物とは別物だということだろうか?

それはともかく、ジャキッとバズーカを構えるいづみ。

左側、右側のショットを入れてから、

再び、正面からのショット。

車の中でパニックになっている竜崎たちの姿が映し出されるが、あえて音を消しているのが効果的な演出となっている。
……しかし、いくら焦っているからと言っても、普通はドアから逃げ出すと思うんだけどね。

いづみ、今度は迷わず引き金を引く。

ロケットは命中するが、車は静止したまま、静かに燃え上がる。

最後は、巨大な火柱が上がる。
なお、いつの間にか、アスファルト道路から広っぱに移動していることには、気付かないふりをしてあげる優しさが欲しい。
こうして、見事、第1話の印象的なシーンの再現となって、いづみの戦いは綺麗に締めくくられる。
最後をこのシーンで締めようと言うのは、当初からの予定だったのだろうか?
それにしても、巻き添えを食った滝沢は災難だったね。

巨悪を倒したいづみだったが、アジトで受けた傷が重かったのか、そのまま自分もぶっ倒れる。

いづみ「恵子、佐織、健……」

苦しそうに三人の名を呼んだ後、ガクッと意識を失う。

あの文字の上に、いかにも女の子らしい佐織の字が重なる。

佐織(いづみ先輩、先輩がいなくなってから、もう2週間も経ちます。佐織は今日も先輩の帰りを待ってます)

カメラが引くと、恵子や健の姿も見えた。
恵子も健も、まだ入院しているらしい。
……さすがに、ちょっと(入院が)長過ぎないか?

健「毎日、何書いてんだ? 佐織の奴」
恵子「日記みたいにいづみに手紙書いてるんだって……」
恐らくここは恵子の病室で、佐織は毎日見舞いに来ているのだろう。健は自分の病室から遊びに来ているのだろう。

健「いづみの奴、もしかしたら……」
佐織「いづみ先輩は、必ず帰ってきます!」
健「そんなこと言ったってよー、なぁ、恵子?」
佐織「私には分かるんです! いづみ先輩は、生きてます!」
断言する佐織であったが、

机に向かったその顔は、涙を堪えるのに必死だった。

と、健の手がスッと伸びて、書きかけの便箋を破り取り、

窓から捨てようとする。
佐織「返して〜!」
健「やめろよ、もう、こんなもん書くのっ」
佐織「やだぁ〜っ」

健「やめろって!」
恵子「健、やめなさいよーっ」
などとやっていると、手紙が手を離れて宙を飛んで行く。
恵子&佐織「ああっ! あ、ああーっ」

青空をバックに、ピンク色の便箋の静止画。
3話のカバン投げシーンを髣髴とさせる。

そして、建物の角から一台の車が走り出てくる。
同時に、ED「素直になれなくて」のイントロが開始される。

車から降りたのは、藤原、そして、いづみ。
藤原、頷いてから、顎を動かしていづみに仲間たちのところへ行くよう促す。

笑顔で振り向くいづみに、クレジットが重なる。
そう、今回は最終回らしく、このままEDクレジットが表示されるのだ。
いづみを演じたのは五十嵐いづみさんでした。
彼女はこれ以降も、色んな作品で活躍されたが、今では結婚して引退されている。

さっきのシーンから時間が経ったらしく、三人は病院の中庭に出て座っていた。

敷地を横切って、こちらに歩いてくるいづみの姿を発見し、三人が驚喜する。

恵子役は土田由美さんでした。
ほんと、番組が打ち切られて一番つらかったのは、彼女だったんじゃないかなぁ。管理人の私もつらい。
「ホラー学園πR」が死ぬほど見たい!

日本最後の正統派ぶりっ子だった(?)佐織を元気一杯に演じたのは桂川昌美さん。
彼女にももっと活躍して欲しかった。

そして、最後くらい役名を表示して上げて欲しかった健は、湯江健幸さん。
ちなみに、劇中では一切出てこなかったと思うが、健の苗字は桑原と言うのだ。
意外にも(?)、4人の中では結局、湯江さんが一番長く芸能界で活躍することとなった。
今でも、2時間ドラマの、途中で殺される悪役なんかでちょくちょく見掛けます。

笑顔のいづみ。

三人、一斉にいづみに向かって駆け出す。

いづみも、包帯代わりに巻いていた佐織のスカーフを振りながら、走り出す。
が、よく見たら、いづみが持っているスカーフは2枚ある。つまり、今付けているスカーフは、戦いの後で新たに買ったもので、手にしているのは、佐織と恵子のスカーフと言うことなのだ。

最後のシーンと言うことで、さすがに土田さんも泣きそうな顔になっている。

そして、クレジットに合わせて、藤原英二役の地井さんの素敵な笑顔。
このドラマ、それほど昔の作品ではないし、出演者の平均年齢も低く、2016年現在、主要キャラの中で鬼籍に入られたのは地井さんだけである(2012年6月29日逝去)。
ほんと、良い役者さんだったよね。彼のお陰で荒唐無稽なドラマに幾許かのリアリティが出ていたと思う。

再び4人のアップが交互に映し出される。
健だけ、足を怪我しているので顔が歪んでいるが、途中で、松葉杖を放り投げる。

建物の前で向かい合う4人。

ここで恵子がくるっと体を回転させると、一瞬でスカーフのないセーラー服姿にチェンジ。

続いて、佐織も衣装チェンジ。

いづみ、まず恵子にスカーフをつけてやる。
「絶対にスカーフを返しに戻る」と言う、あの別れのシーンの約束が守られた訳である。


色んな思いを込めて、互いの顔を見詰める二人。
不本意な形で終わってしまったが、このドラマの軸はやはり、いづみと恵子の「友情」にあったんだと、再認識させてくれる。

続いて、佐織にもスカーフを結んでやるいづみ。

二人の背後に、これも盛装した健が立ち、ポンと肩を叩く。

恵子と佐織が後ろを向いて、健と目を見交わす。
前にも書いたかもしれないが、このドラマの素晴らしさは、「レギュラーキャラクターが全員魅力的だ」と言う、奇跡のようなキャスティングにあると、自分は思うのである。
一方で、五十嵐いづみも含めて、全体的に知名度の低い人が多かったことも、視聴率がふるわなかった原因だったのだろう。

もう一度いづみの方を見る三人。
それに答える形で、いづみの飛び切りの笑顔を映し、これがラストカットとなります。
うーん、さすがに胸に迫るものがありますな。
今回で最終回なので、当然、予告はない。その分、本編が若干長かったような気がする。

いづみ「あなたがターゲット、バーン!」
ついでなので、最後のアイキャッチを貼っておく。
以上、「いづみ」のレビューはこれにて全て終了です。
……
それにしても、自分は何故この番組にこれほどまでに惹かれるのだろうか?
土田由美さん、加藤麻里さん、山本恵美子さん、布瀬智子さんなど、好みのタイプの女優さんがたくさん出ているから……と言う身も蓋もない理由の他に考えられるのは、スタッフがリスクを取ることを恐れず「何か新しい物を作ろう」と言う気概を持って作っている姿勢に好感が持てるからだろう。
あえて「スケバン刑事4」ではなく、全く新しいドラマにひたむきに挑戦し、そして視聴率競争に敗れて志半ばで散っていった
からこそ、ついつい応援したくなるのだ。
新進のバンド、A-JARIが音楽を担当している点も大きいと思う。
荒削りなところや、自分たちの楽曲をしつこいくらいに何度も流すところとか、不満もあるが、自分は大好きだ。
その影響で、A-JARIのアルバムをほとんど買い集めてしまったほどである。
生硬な感じのシナリオ(特に1話や4話、7話など)も、繰り返し見ているうちに気にならなくなる。
最近は、むしろ、愚直なまでに自分の書きたいストーリー、台詞を書いている我妻氏の脚本に、たまらない愛着を覚えてしまうようになっている。無論、武上純希さんのウェルメイドなシナリオも好きだけどね。
と言う訳で、人を選ぶ作品だとは思いますが、是非実際に作品に触れてみてほしいと、管理人からのお願いを述べさせて頂いて、この拙いレビューを締め括らせていただきたいと思います。
最後までお付き合い下さった皆さん、ありがとうございました。
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