いよいよ第13話。1回目の最終回である。
以前にも書いたが、この番組、本来は13回で打ち切りなるところだったが、後番組の準備が間に合わないからと、「つなぎ」で14話と15話が急遽作られた異例の経緯を辿っているのだ。
我妻氏の回想によると、13話のシナリオを書き上げた後で、14話・15話の話を聞かされたそうで、一度終わらせた作品をまた書くのはとても大変だったとか。それに、1年間の放送プラス映画化まで見込んでいたライターとしては、断腸の思いで2話分のシナリオを書かれたであろうことは想像に難くない。
結果的に、13話、15話と、2回も最終回のある変則的な形になってしまったのだが、個人的には2話分のボーナストラックがついてきたようなもので、非常に嬉しかった。14話の野球の試合や、15話でのむーちゃんの予想外の活躍など、注目すべきシーンも多い。
さて、12話の最後からの続きなので、ナレーションによる「あらすじ」から入る。
ナレ「遂にいづみ抹殺指令が発動された。謎の組織に健や佐織が次々と倒されていった。そして恵子は謎の組織の正体を掴む為に身を捨てて敵を追った」
まずこのナレーションから突っ込んで、いや、分析していこう。
「遂に〜発動」って、第1話から発動されている気がしてならないのだが……。それを石津の個人的性癖趣向でストップさせていただけなのでは?
それに、「健や佐織が倒された」と言うが、佐織は単にいづみのよけた爆弾付きボウガンの被害を受けただけだし、健もコマンドたちに痛めつけられていづみたちの居場所を吐いただけだから、「倒された」と言う表現はちょっとそぐわない。
「恵子は〜敵を追った」も、恵子は車のトランクに入り込んでそのまま運ばれていっただけで、全く追ってないんだけどね。

恵子の乗った車の後を追い、東大寺と二人だけで捜索を行っている藤原。
恵子が落としていったいづみへのメッセージを読む。

それを佐織の病室で藤原から渡されたいづみ、
(私は私の為だけに戦うんじゃない)
ナレ「恵子を追って、敵・石津麟一郎といづみの戦いが今始まる」
「今、始まる」と言うフレーズは、4話・5話の連続エピソードの「あらすじ」でも使われていた。

その石津は、どこかの建物の中で、部下の軍人たちを前に演説をぶっていた。
石津「諸君、今、時は満ちつつある。やがて続々と生み出されるバイオフィードバック(発音が変)たちを先頭に、我が軍は日本の国防を影から支配する。そして近い将来、全国の防衛網は我々の支配下に置かれるだろう」

石津「真に選ばれた者のみが、21世紀を動かすことが出来る。諸君、その胸にしっかりと刻み込んでおいて貰いたい」
演説を聴いている将校たちの姿も映し出される。みんな弱そうで、服がシワシワなのがちょっと悲しい。

石津「21世紀は我々の手で動かすのだと言うことを!」
……と言っても、まだ10年以上先ですが。
ここで石津が言う、国防うんぬんと言うのは、「謎の組織」が示した初めての具体的な目標であろう。
ただし、時間的な余裕がなかったのか、13話ではその辺は描かれず、14〜15話で雑ではあるが描かれることになる。
CM明け、再び佐織の病室。

頭をぐるぐる巻きにされている佐織。
考えたら、13話は佐織の出番はほとんどないんだよね。桂川昌美さんとしては、不満が残る回だったろうが、その分、14話と15話でハッスルされておられる。

病室には、藤原と健が残っていた。
藤原「こんなことになるんなら、早いとこ、なんとでも理由をつけていづみをブタ箱にぶち込んでおくんだったな」
健「無理するなよ」
藤原「ええっ?」
健「藤原さんは分かってる筈だよ、いづみだって、ほんとは普通の女の子だってこと、だから追いかけ続けてんでしょ、今時珍しい普通の女の子助けたくって……」
藤原「けっ、まさか!」
藤原と健がじっくり絡むのは、1話以来。
二人がどういう間柄なのか、もうちょっと詳しく描いて欲しかった。
まぁ、健も昔は結構グレていたようだから、少年課の藤原には以前から目を付けられていたのだろう。
未練のようだが、打ち切りにならなければ、健の過去にスポットを当てたストーリーも作られていたかも知れない。
佐織、薄っすら目を開けて「いづみ先輩、頑張って、下さい」とつぶやく。

いづみがバイクで走っている姿に切り替わると同時に、前期OPの「JUST FOR LOVE」がスタート。

山の中の舗装道路を軽快に走るいづみ。
五十嵐さん、バイクには乗れたらしいが、これはスタントだろう。もし本人ならもっと顔がはっきり見えるように映すだろうからね。

無論、別に撮ったバストアップも挿入される。

遠ざかっていく後ろ姿に、サブタイトルが重なる。
なお、いづみの走る道路脇に「鳩山カントリー入り口」と言う看板が一瞬見える。
鳩山カントリーは、埼玉県比企郡にあるゴルフコース。

晴海病院から出てきた藤原、運転席で熟睡している東大寺を見て、
藤原「おお、大卒はお休みだ」

藤原がドアを開けると、東大寺はそのまま地面に落ちる。
藤原「眠気覚ましに顔でも洗って来い」
東大寺が素直に車から離れた隙に、藤原は素早く運転席に座って車を発進させる。

いづみ、リボンの落ちていたところに来て、一旦止まる。
いづみ(恵子のリボンが見付かったのはこの辺り……)
いづみはそのまま道なりに進む。

どんどん山の奥へ入って行き、道端にサイリウムライトが落ちているのを見付ける。
いづみ「恵子……」
恵子が目印として落として行ったものだろう。サイリウムライトは、プロムで使うつもりだったのか?
そう言えば、突っ込むのを忘れていたが、そのバイク、何処で調達したの?

その恵子は、既にバイオフィードバック実験場(室?)に入れられ、こめかみに電極を付けられた状態で、「う、うーん」と、色っぽい喘ぎ声を出していた。
後述のように、恵子はたった半日で何の訓練も経ずにバイオフィードバック戦士に仕立て上げられている。石津のバイオフィードバック研究も、いつの間にか格段の進歩を遂げたようだ。11話で石津が「バイオフィードバックのコツが見えた!」みたいなことを言っていたが、それもあながちハッタリではなかったのだ。

恵子「うん……」
しかし、頻繁にこんな色っぽい声を出されては、研究者の男子諸君も、ちょっと仕事に手が付かなかったのではないだろうか。

モニタールームにいる石津のところへ滝沢がやってきて、右側の壁にある巨大スクリーンにこちらに接近中のいづみの姿を映し出す。
石津「いづみぃ……、神崎部隊を出動!」

いづみは、落葉が絨毯のように堆積している林の中にバイクを捨てていた。
向こうに芝生が見えるが、それこそ鳩山カントリークラブ内で撮影しているのかもしれない。
顔に迷彩を施したコマンドたちが、じわじわとバイクを取り囲む輪を縮めて行く。

と、樹上に隠れていたいづみがサッと舞い降りる。

隊長らしき男、恐らくこれが神崎だろうが、それと向かい合ういづみ。
神崎、パッと見た中川家の礼二に見えてしまうのは管理人だけではあるまい。
神崎「俺たちを相手に勝ち目はないぞ……」

いづみ、無言で恵子のリボンを鉢巻のように額に巻く。
神崎「死ぬ気か?」

無言でファイティングポーズを取るいづみ。

早速、神崎の部下たちがいづみに襲い掛かる。

神崎は、部下の訓練でも眺めるように、少し離れたところから見物している。
どうでもいいが、神崎部隊って6人しかいないぞ。

いづみの強烈な蹴りがコマンドの胸をえぐる。
だが、コマンドは平然としている。服の下に、特殊な防護服のようなものが見える。
容易ならぬ相手だと、いづみも顔色を変える。

ニヤリと笑う神崎。
このシーンだけの出演となったが、なかなか存在感のあるキャラである。演じるのは手塚秀彰
緑色のベレー帽は、やはりグリーンベレーを意識しているのだろうか。

部下の攻撃を受けて倒れこむいづみ。
いづみが立ち上がるのを待って、右パンチ、右ひざ蹴りを仮借なく叩き込む神崎隊長。

神崎「苦しまないように処理してやる」
木の幹に背中をつけて立ち上がるいづみに、神崎が迫る。

突然、光を反射する何かが空を舞い、

いづみに向かって伸びた神崎の右手にカチャッと嵌まる。

いづみも神崎も、その飛んで来た方向へ視線を飛ばす。

そう、他でもない、いづみを追ってきた藤原だった。
藤原「やったぜぇ、いづみぃ、これがお前の敵かぁ?」
ロープの付いた手錠は、6話の早乙女戦で藤原が考案・使用したもの。
藤原「どうやらお前の言ってたことはデタラメじゃなかったようだな!」
藤原の言う「お前の言ってたこと」と言うのが、いまひとつ分からないのだが……。そもそもいづみ、藤原にほとんど「謎の組織」について語ってないからね。あるいは、3年前の殺人罪がぬれぎぬだったと、漸く確信したのだろうか?
ただ、藤原、1話のラストの時点でいづみが怪しげな兵隊たちと戦っている姿を目撃してる筈なんだけどね。

藤原「この野郎、国家公務員にたてつく気かよ、この野郎」

神崎は手錠を付けたまま飛び上がり、藤原に強烈な右蹴りを放つ。
藤原はなんとかよけるが、背後のカシの木が火を吹くほどの凄まじい威力だった。
こんな場合に石津が即座に指名したことからも分かるように、神崎部隊は最精鋭部隊なのだろう。
コマンドたちが藤原に殺到するが、

藤原はいきなり銃をぶっ放す。大人気ないなぁ……。

左肩に命中した男は、顔を歪めて苦しむ。
しかし、特殊な防護服を着てる筈なんだけどね。
まぁ、さすがにバイオフィードバック発動前のいづみの蹴りよりは、銃撃の方が衝撃は大きいだろう。

次々とコマンドを撃ち倒し、得意そうな藤原。
藤原「へっへー、正当防衛だぜ!」
日本の国防を支配しようと言う組織の最精鋭部隊が、たかが少年課の刑事相手にこんな醜態を晒してはいけない。
(ただし、14話以降の藤原の行動を見ると、彼がただの所轄のヒラ刑事ではなく、かつては公安組織などに属していたプロフェッショナルだったと言う可能性もありうる)
神崎は苛立たしそうに足元に転がる部下を蹴飛ばすと、必死の形相で藤原に突進する。

藤原、引き金を引くが、カチカチと音がするだけで弾が出ない。ニューナンブM60は、5発装填だから、勘定は合う。
狼狽した藤原は、思わず拳銃を投げ付ける。どこがプロフェッショナルだ。
藤原の腹を蹴り、重そうなパンチを叩き込む神崎。まともに戦っては神崎が圧倒的に強いかと思いきや、

神崎の腕を取って、見事に投げ返す。
……
うーん、やっぱり嘘でも良いから、ここは神崎の圧倒的な強さを見たかった。藤原と言うより、地井さんへの配慮か?

藤原「警察舐めんなコラァ!」
だが、神崎の両足蹴りをまともに喰らい、あっさりダウン。

ここでやっといづみが登場。

神崎、振り向きざまに右回し蹴り。

いづみはそれをがっちり受け止め、右拳を神崎の胸へ放つが、神崎はそれを平然と受けてから、左ストレートで切り返す。

いづみ、倒れている藤原のそばまで吹っ飛ぶが、サバイバル・ソーを手に振り返る。

神崎の右ストレートを左手のリングで止めると、神崎の腕の下から右手を伸ばし、神崎の襟を掴む。

そして右手のリングで神崎の胸を強く打つ。

防護服の上からでもかなりの衝撃があったのだろう、神崎の顔色が変わる。

右手を引いてリングを構えるいづみ。この攻防は地味だがかなりのハイレベルで、見応えがある。
本当なら、もっと時間をかけて描きたいところだったと思うが、何しろ今回は時間がない。

いづみ、空高くジャンプして、右蹴りを神崎の後頭部へ放つ。

神崎「あ゛っ」
お疲れしたーっ!

再び実験室。「う、うーっ」と色っぽく喘いでいる恵子。

滝沢「司令官、いづみが神崎部隊を全滅させました。しかもバイオフィードバックを使わずに」
石津「全部隊を投入しろ、重火器の使用も許可する」
なんか、滝沢、スカート履いてるように見える。
終わってみれば、(藤原の加勢があったとは言え)神崎部隊ってあまり強くなかったなぁ。
3話のターミネーターや11話のコマンドーたちの方がよっぽど手強かったが、既に石津の手元にはそう言う手駒がなかったのかも知れない。だから、急いで恵子の調製を行っていたのかもしれない。

いづみ「大丈夫?」
藤原「こう見えたって柔道三段、空手三段だ。体の鍛え方が違……う……あれ、ダメだぁっ」
強がりを言っていた藤原だったが、再び苦しそうに倒れ込む。
神崎を見事に投げたことから見ても、柔道三段と言うのはあながち嘘ではないかもしれない。

藤原「へっへ、そんな大きな目で俺を見詰めるなよ」
照れたような声を上げる藤原。
実際、藤原はいづみに(男として)惹かれている部分があったことを思わせる台詞である。

このタイミングで、藤原は内ポケットから石津の写真を取り出して見せる。
藤原「石津麟一郎、湾岸を牛耳る、石津産業の社長……かっては国防省のエリート将校だった」
いづみ「何故そんなことを?」
いづみ、「何故そんなことをわざわざ調べてくれたのか?」と聞きたかったのだろうか。

藤原「何も言うな、聞け、奴はその頃、今の軍事力ではポスト核戦争の国防は出来ないと考えた。はじめは国を思う、純真な気持ちだったかも知れん。だが、異常なほど軍事にのめり込むうちに、奴はかつてのナチスのような怪物に変わってしまった」

強くなった風で、いづみの黒髪が揺れ動いて、このシーンのいづみはとても美しい。
藤原「大学で研究した生化学を使い、石津グループと言う自分の企業グループを隠れ蓑に、奴は超兵士を作り出そうとした」
いづみ「その為に私が?」
藤原「奴は今や、その軍事力で日本を影から支配しようとしている。恐ろしい野望に満ちた、化け物だ。放っておけば多くの若者が犠牲になり、やがて日本そのものが大変なことになる」
いづみ「藤原さん!」
話しながら、いかにも辛そうに咳き込む藤原を真剣に気遣ういづみ。序盤のぎすぎすした関係からすると、格段の変化である。
それにしても、藤原はどういう手段で、ここまで石津のことを調べ上げたのか? やはり、彼自身、元公安か何かで、昔のツテを頼って調べ出したと見るのが自然だろう。
まぁ、脚本家の元々の構想としては、こんな慌しく台詞だけで説明するのは不本意だっただろうが。

藤原「ああ、それからな、ちびっこい、あの、佐織って、あいつから伝言だ。『いづみさん、頑張って』ってよ……」

いづみの服を掴み、
「死ぬんじゃねえぞ、いづみ! その手に取り戻してみせろ、奪われたお前の青春って奴をな」
いづみ、頷きながら「ありがとう」

何しろ時間が切迫しているので、次のシーンで早くも石津のアジトを見下ろしているいづみ。

実際は何の施設なのか分からないのだが、横長の棟の両端に、こんなメーサー熱線砲みたいな設備が付いていて、「謎の組織」の本拠地としては、それなりに雰囲気のあるロケーションである。
ま、これはいわゆるパラボラアンテナと言う奴だろう。

金網には、こんな注意書きの看板が付いていた。

いづみ「石津麟一郎……」
改めて敵の名前を口にするいづみ。

だが、既に彼女をバズーカ砲(M72A2)で狙っている者がいた。
砲身に書かれている文字からして、いづみが1話で使ったものと同じ小道具かな。

そのバズーカが火を吹いた所でCMへ。なかなか良い引きである。
CMが明けると、

砲火をさけながら、林の中を走り回っているいづみの姿があった。

爆発が、こんなしょっぱい規模なのがちと悲しいが、こんなところで大量の火薬を使える筈もない。

傾斜を飛ぶように降りるいづみ。背後で再び爆発が起き、

そのまま下の枯れ草の中へ突っ込む。
ここは、かなり高さがあって、画面では小さいけれどなかなか迫力がある。
これは、スタントだと思うが、五十嵐さん本人がやっていてもおかしくない。
うーん、でも、本人だったら落ちた後にノーカットではっきり顔を映すだろうから、スタントだろうなぁ。

足を怪我して、そのままぐったり動かなくなるいづみ。

数人の兵士が徐々にいづみに近付いて行く。
その途中金網のすぐそばに、アンテナが立っている場所がある。恐らく、敷地内には、たくさんこんなものが立っているのだろう。
さっき、ゴルフ場で撮影しているのかもしれないと書いたが、むしろ、この施設付近で撮っていたと考える方が自然か。

ひとりの兵士が、銃身でいづみの体を起こそうとするが、

無論、いづみは気絶したふりをしていただけで、素早く銃をつかんで兵士を投げ飛ばす。
この「死んだふり」は、いづみの得意とする技で、4話でも効果的に使われていた。

近くにいた二人の兵士と至近距離で戦ういづみ。思いっきり銃を撃っているのだが、当たらない。

小さくて分かりにくいが、木の幹を軸にして、回し蹴りを放ついづみ。無論、これはスタントだ。

敵をひとり片付けたが、さすがに足に負担が大きく、「うっ」と顔をしかめる。しかし、すぐキリッとした表情に戻る。
残る敵は、バズーカ砲を抱えていづみを追い掛け回し、それでいづみをぶん殴る。
さすがにこの距離でバズーカ砲を撃つほどバカではないらしい。

砲身で、思い切りいづみの腹をえぐる。

金網のそばまで後退するいづみに、敵が突進する。いづみはその足を払って転がすと、

振り向きざま、サバイバル・ソーのリングを投げ付ける。リングが直撃し、敵は背後の金網にぶつかり、高圧電流を浴びて悶絶する。

そして煙を出しながら、ぐったりと沈み込む。
これはどう見ても死んでるよな。
しかし、ラスボス戦直前の戦いが、こんなこじんまりしたものになるとは、スタッフも不本意だったに違いない。

いづみ、左右に油断なく目を配りながら、ハンカチで傷口を縛る。
いづみ「この傷では、30分しか持たない」

リングとバズーカ砲を拾い上げると、まずバズーカ砲を投げて金網の向こうへ落とす。

続いて、自らもその場で跳躍して、ぎりぎりで金網を飛び越す。
再び、実験室。

それらしい操作パネル。

相変わらず、「う、うーん」と悩ましく身悶えしている恵子。

その姿態を思う存分、こころゆくまま、一瞬たりとも目を離さず凝視している石津おじさん。

(カメラに向かって)「別にいやらしい気持ちでやってる訳じゃありません」
……じゃなくて、

そばで報告をしている滝沢の方を向いたのである。
滝沢「いづみはバイオフィードバックを発動せず、この建物まで辿り着きました。その上っ……」
石津「どうしたっ?」
滝沢「何故か我が全軍が退却しました!」

石津「…マジで?」(註・言ってません)
ここ、滝沢が物凄く重大なことをさらっと言うのが、妙に可笑しいんだよね。
それに、ずーっとサングラスで顔を隠している石津も、冷静に見直すとなんか笑ってしまう。
実際の石津は、無言で自身の驚きと失意を鎮めると、あくまで落ち着いた口調で、
「諸君、ご苦労だった、全員退去!」と、これまた豪快な命令を発する。
滝沢「しかしっ」
石津「司令官の命令は絶対だ!」
その司令官の命令も聞かずにトンズラしちゃった兵隊さんたちに聞かせてやりたい台詞である。
石津の頭越しにこんな命令を出したのは、「上」(後述)以外考えられないが、番組的にはこの場合、いづみを迎え撃つそれなりの数の兵士を揃えるのが難しかったと言う身も蓋もない事情もあっただろう。それに、兵士を出したらそれと戦ういづみのシーンも必要になって、時間的に厳しいと言う側面もあった筈だ。

滝沢は承服してペコリと頭を下げる。これが、石津の良き補佐役だった滝沢のラストカットになるのかな。
石津「諸君、今までの協力には感謝する。退去してくれ」
滝沢も研究者たちも、石津に一礼すると、あんあん悶えている恵子を放置してすたすたと部屋から出て行ってしまう。

とうとうひとりぼっちになってしまった石津、ぐっと唇を噛み締めて涙を堪える。
そんなことをしている間にも、いづみはバズーカを抱えて建物に近付いていた。

石津「とうとう来たな、一個師団の力を残したまま! いづみ、やはりお前は生まれついての戦士だ」
既に建物はもぬけの殻で、いづみは何の障害もなく建物内に入り込む。

初めて訪れる場所だったが、廊下のあちこちに親切なガイド表示があるので、いづみはカンタンに目指す場所に到達してしまう。無論、いづみが向かうのは、そこから全てが始まった、バイオフィードバック実験室であった。

青い扉にゆくてを阻まれると、

いづみは数歩下がって腰を落とし、バズーカを構える。

ドラマの象徴とも言うべき、バズーカ砲の砲火が久しぶりに唸り、青い扉を粉砕する。

……と思ったけど、粉砕と言うほどじゃないなぁ。よほど頑丈な材質だったのだろう。

更に建物の奥深く、感じとしては地下フロアに下りたいづみの頭上から、「プロトタイプいづみ、君の仲間のバイオフィードバック戦士を紹介しよう」と、石津の声が響く。

物々しいBGMを背に、ゆっくりとバイオ実験室から出て来たのは、他ならぬ恵子であった!

石津の声「バイオフィードバック、戦う意志がお前を最終兵器に変える!」
この台詞って、バイオフィードバック発動に必須なのか?
それにしても、拉致されて半日程度で、ほとんど素人の恵子をバイオフィードバック戦士に仕立ててしまうとは、前述したように彼らの技術は僅かの間に長足の進歩を遂げたようだ。
ただ、飛葉ちゃんにしても恵子にしても、14話・15話に出てくるバイオフィードバック戦士にしても、結局はプロトタイプのいづみには勝てなかったのだから、所詮、マスプロ方式はプロトタイプ方式に勝てないと言う「ガンダムの法則」には逆らえなかったということか?
無論、元になる人間の能力に左右される面もあるのだろうが。

いづみ「違う!」
耳を塞いで叫ぶいづみ。
石津の声「いづみ、お前は選ばれた戦士として世界を変える。21世紀は神に選ばれた我々の時代なのだ!」
いづみ「違う、違う、違う!」

石津の声「……え、違うの?」
いづみ「人違いです」
じゃなくて、
石津「何故自らの優れた力を呪う?」

いづみ「誰も戦いたくなんてない、最終兵器になりたい人間なんて、いやしないわ!」

いづみと違い、すっかり洗脳されている恵子はなんの躊躇いもなくナイフを手にいづみに襲い掛かる。
本来ならいづみもこんな冷酷な戦士として生まれ変わっていた訳で、それを考えるとかなり怖い。
でも、洗脳を受けた状態のいづみというのも、一度見てみたかった気もする。

いづみ「恵子!」
いづみはナイフをかわしつつ、恵子の体を壁に押し付けようとするが、恵子はそれを払い除け、ナイフを振りかざす。
土田さん、体を動かすのは苦手(本人談)らしいが、いづみより上背があるので、こういう場合、威圧感があってなかなか絵になる。

恵子は、左手でいづみの喉をつかみ、逆にいづみの体を押し付ける。そして右手のナイフで刺そうとするが、

いづみは一回転しながら恵子から離れる。
恵子も休まずナイフを繰り出す。

いづみ、腰を落としたまま、恵子のナイフを蹴り上げる。
こうして見ると、やっぱり土田さんはアクションがあまり得手ではないようだ。
それにしては、13話でバイクに追われている時のアクションはなかなか見事だったけどね。
いづみ、実験室の中へ逃げ込む。恵子もすぐ追って来て、

いづみをベッドに投げ飛ばし、のしかかるようにつかみかかろうとするが、いづみは素早く体をかわす。
いづみ「恵子っ」

いづみはベッドごと、恵子を押し返す。

恵子の右ストレートを受け止め、その腕にぶらさがるようにしてベッドの上を転がるいづみ。

それでも冷静に、機械のように淡々といづみに向かってくる恵子。
いづみ「恵子、気が付いてよ」
このアクションシーンは女優二人で演じるにしては割と長丁場である。
だが、やはり土田さんはアクションが苦手なのか、よく見るとほとんど立ったままである。

完全に正気を失った目で、ぐいぐいといづみの首を絞める恵子。

あえて抵抗せず、されるがままのいづみ。

いづみ「恵子……!」
さすがのいづみも苦しそうな表情になる。
いづみも、激しい戦いを経たあとで体力が落ちていただろうし、相手はマスプロとはいえバイオフィードバック戦士である。
このままバイオフィードバックを発動せずに戦っていたら、本当に恵子に殺されていたかもしれない。

ここでBGMが、悲愴な曲調に変わり、恵子といづみの過去の名場面集が挿入される。
ただし、なにしろエピソードが少ないので、9話の回想シーンと大して変わらないのがちょっと悲しい。
いづみ「恵子になら……殺されてもいいわ。今までありがとう」

カメラが、二人の方を向いたまま円を描くようにぐるぐる回る。
これは、円形のレールの上にカメラを乗せているのかなぁ?
回転速度が速くなっていき、再び名場面集が流れた後、

今度は逆方向へカメラがゆっくり回りだす。いつの間にか、恵子の表情から剥き出しの敵意が消えている。

いづみ「恵子っ!」

回転が止まり、恵子も正気を取り戻す。
恵子「いづみ……」
二人の友情が、冷徹な科学に打ち勝った、感動的なシーンである。
まぁ、なんといってもあまりに速成だったので、恵子の洗脳が完全でなかったということも考えられる。

恵子はそのまま倒れてしまう。抱き起こそうとするいづみに、恵子はモニタルームを指差して見せる。

いづみが視線を向けると、ラスボス石津の姿があった。

石津はゆっくりとドアを開け、フロアに続く階段の途中で立ち止まり、
石津「かつて兵士たちの先頭に立つことを夢見て、自らにバイオフィードバックを施した男がいた。しかし、まだ研究は十分ではなく、男は研究者として生きる道を選ぶしかなかった。いづみ、お前はその時からの私の見果てぬ夢だった。だがそれも、今は幻と消えた……」
突然の告白を始める石津。詳しいことは説明されないが、石津はもっと以前に、自らを実験台にしてバイオフィードバック戦士を作り出そうとして挫折していたのだ。
(しかしと言う台詞のところで、背後から煙が入ってくる。バズーカ砲で起きた火が早くもここまで延焼してきたのだろうか)

が、そんなおじさんの深い気持ちを「悲しい夢www」とバッサリ切り捨てる少女の残酷さ。

石津「黙れっ!」
日焼け中年の怒りに火が付く。

石津、パッとサングラスを取り、いづみを睨み付ける。
ここで、いづみがバイオフィードバックする時に使われる演出が石津に適用される。
カメラが、右目にアップして飛び、ついで、左目にアップして飛ぶと言うあれね。
さすがに髪が浮き上がるという演出は省略されている。

ぎりぎりぎりとグローブを嵌めた拳を握り締めるバイオフィードバック戦士・石津。
しかし、普通にバイオフィードバック発動してるんだけど、研究者になるしかなかったんじゃないの?
11話でも、いづみと一緒に元気に動き回っていたし、バイオフィードバックの後遺症があるようにも見えない。
あるいは、発動すると命に関わるほどの負担がかかる為、使えなかったということだろうか? この点については、もうちょっと丁寧に説明して欲しかったところだ。燃えるシチュエーションではあるが。

石津のパンチを喰らい、恵子の横にうつ伏せに倒れるいづみ。

石津「もろい……」
考えたら、石津がサングラスも眼鏡も外すのは、初めてだった……っけ?

意識朦朧としている恵子、いづみの体に手を伸ばし、
「いづみ、あいつを倒して……あんな奴にやられたまんまじゃ、悔しいよ」

恵子の声が届いたのか、いづみがパチッと目を開く。それを見て、恵子も笑みを浮かべる。

勝利を確信してそこを去ろうとしていた石津、それに気付いて足を止め、振り向く。

それでも苦しそうに、石津を見据えたままゆっくり立ち上がる。

凛々しい眼差し。
ドラマはコケてしまったが、五十嵐さんのキャスティングは大正解だったね。

石津、険しい顔をしていたが、やがて自分が長年追い求めた「夢」を遂に探し当てたように、ニッと笑みを刻む。
ここで、やっといづみもフィードバックを発動!

いつものように髪がぶわっと逆立つが、今回は特にそれが美しく波打つ。
そして、鉢巻代わりにしていた恵子のリボンが外れる。
もっとも、さすがに相手が石津なので、いつものフレーズは省略されている。ま、恵子の時に流れたけどね。

夢にまで見た本物のバイオフィードバック戦士を前に、石津の目が狂気じみた歓喜の色に染まる。

いよいよ最終決戦となるのだが、いつの間にかモニタールームの向こうまで火が燃え移っている。

いづみ、ベッドに倒れ込みながら、石津を蹴りを放つが、石津はそれをかわした上で、

いづみの足の傷をむんずと掴む。
いづみ「う、ううーっ」
苦痛に顔を歪めるいづみ。

それでも上体を起こして右ストレートを打つ。
石津は左手で受け止め、逆に右拳をいづみの腹部にめりこませる。

そして豪快にいづみを床に叩き付ける。

いづみが起き上がったところでベッドを押し込み、いづみをベッドと壁の間で押し潰そうとする。

とても嬉しそうな石津さん。
バイオフィードバックの研究に長年打ち込んできた石津にとっては、まさに至福の時間だっただろう。

ベッドを全力で押して、本気でいづみを殺しに掛かる。

が、その瞬間、いづみはベッドの上で上体を倒し、

そのまま一回転しながら強烈な蹴りを石津の胸板に喰らわす。

反対側の壁に叩き付けられる石津。

なおもいづみに飛び掛かるが、待ってましたとばかり、右足蹴りが飛んでくる。

今度は、やや角に近いほうへ飛ばされた石津、思わず右腕で背後のパネルを殴ってしまう。
一瞬の間を置いて、パネルが凄まじい光を放ち、画面が真っ白になる。

恐らく、凄まじい高電圧を受けたのだろう、石津の体が小さく痙攣する。

ペタッとその場に腰を落としてしまう石津。

いづみ、勝利を確信する。

だが、いづみが横を向いた瞬間、再び石津が立ち上がる。
うーん、ここは、いづみが目を逸らすカットが間に欲しかったところだ。

いづみが気の抜けた顔で立ち上がったところに、鬼のような形相の石津が襲い掛かってくる。

いづみ、石津から距離を取ると、伝家の宝刀サバイバル・ソーを構える。

委細構わず突っ込んでくる石津。
どうでもいいけど、恵子の体が邪魔だね。
また、廊下側にも火の手が回っていることが分かる。

背中合わせの状態で、いづみのチェーンが石津の胴体をぎりぎり締め上げる。
いづみ「傷付き倒れていった若者たちへ……石津麟一郎、これが私のラストバトル!」
カッコイイ台詞を放った後、思いっきりチェーンを引くいづみ。石津の体が硬直する。
ちなみに「ラストバトル」と言うのは、14話・15話の台本用サブタイトルにも使われている。

いづみ、チェーンを石津から外す。石津は既に生ける屍のようにその場に立ち尽くすのみ。
そこへいづみの渾身の回し蹴りが炸裂する。

いづみの脚の動きが、点滅する画面の中で描かれるが、キャプするのがほぼ不可能なので説明しにくい。
とにかく、いづみの右足が石津の右胸に直撃。

石津は火を飛び越えて(火傷しちゃうから)、廊下に倒れる。

それでも、まだ意識のある石津は起き上がり、
「それでこそ、最終兵器だ。私の見果てぬ夢だ。お前の幸運を祈る……」
石津が再び倒れ、その体が火に包まれる。

いづみは感慨に耽ることもなく、恵子の体を抱き起こす。
いづみ「戻ろう、恵子、佐織や健のいるところに、今度こそ普通の女の子になって一緒に生きよう!」
恵子、大きく頷き、いづみも頷いて見せる。
しかし、この後、二人は逃げ遅れて焼死したと言う(註・言いません)
ちなみに、彼らの背後では、「謎の組織」の兵士によって石津がちゃっかり助け出されていた訳なのだが……。
なお、石津はバイオフィードバック戦士として、普通に戦っていた。
それなのに自らに課したバイオフィードバック実験は失敗だったと言うようなことをいづみに明言していた。発動による副作用でもあるのかと思ったが、14話・15話を見る限り、そういう形跡も見られなかった。
これも急遽打ち切りにされたドラマ特有の混乱だろうか? 実際は、その辺もちゃんと計算されたストーリーになる筈だったのかも知れない。あるいは、物語の途中、自ら実験台に志願する、みたいなシーンが用意されていたということも考えられる。
ここで場面が変わり、

薄暗い部屋から、葉巻なんぞをふかしながら電話をかけている、いかにも大物っぽい人物のシルエット。
それにしても、薄暗い部屋が好きな奴が多いのう。目が悪くなるぞ。

その男こそ、しばしば石津たちの会話の中に出てきた「上」なのだった。
しかし、石津のオフィスには誰もおらず、コール音が空しく響く。
やがて留守電になり、
男「久しぶりだ、石津君、今日の会議でバイオフィードバックプロジェクトは中止と決定した……」

男「残念だ……」
カチャッと電話が切れる。
石津の長年の夢が、あっけなく潰えた瞬間であった。少なくともこの瞬間は……。
ちなみに男の声は、14話・15話に出てくる木村元氏のもの(だと思うが)。

全ての戦いが終わり、再び女子高生として……って、おい、まだ卒業してないの? あれ……?
(気を取り直して)平穏な生活に戻ったいづみ。
背後に「芝浦商店会」とはっきり見える。

12話でプロムに行くの行かないのと騒いでいた橋の上に来ると、欄干から川を見下ろす。

久しぶりに、あの逆回転時計を取り出す。
強くそれを握りながら、(私の時は……)

そこへ元気良く恵子と佐織がやってくる。
恵子「いづみーっ」
佐織「いづみ先輩ーっ」

恵子「おはよ」
佐織「おはようございます」
いづみ「おはよう!」
恵子「もうこれ捨てちゃないよ」
恵子、いきなりいづみの時計を取って、川に放り投げてしまう。

さすがにいづみが驚いて、口を開けてその軌跡を目で追う。

時計はボチャンと音を立ててあっけなく沈む。

しかし、それを見詰めるいづみの顔には、時計をなくした悔しさより、時計ごと忌まわしい過去を切り捨てることが出来たような、安堵に似た色が広がっていく。

佐織「いづみ先輩、はいプレゼント」
かねてから用意していた普通の腕時計をいづみに渡す。

いづみ「ありがとう」
しっかりと握り締めて、明るい笑顔で礼を言う。

さっそく手首にはめて、角度をあれこれ変えて見るいづみ。
スヌーピーのイラストの入ったいかにも女の子らしい腕時計だった。

佐織「凄い似合ってますよね」
恵子「ほんと凄い似合ってるよ」
いづみ「ほんとぉ?」
佐織「これからはサバイバル少女じゃなくてぶりっ子少女になれますよ」
恵子「なれるなれる」
佐織の言葉に、人差し指で自分の頬を触ってみせるいづみ。

三人の笑い声が弾けたところで「完」ではなく「つづく」のだった。
このラストシーンも悪くないが、15話のラストシーンがとても感動的だっただけに、ほんとにこれで終わりにならなくて良かったと心から思う管理人であった。
予告ナレーションは、佐織と恵子の掛け合いから入り、
佐織「いづみ先輩はもう普通の高校生なんですよ」
恵子「そうそう、も、あんなこと気にするのやめようよー」
佐織「そうですよ、いづみ先輩」
恵子「いづみぃ」
いづみ「石津麟一郎は……」(車の急ブレーキのSE)
いづみの思わせぶりな独白で終わると言う今までにないパターン。
映像については、今回はほとんど違いがないので省略する。
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