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第6話

伝説の悪、サソリ NEXT 目次へ
監督 大井利夫 脚本 武上純希
アバン Aパート Bパート 予告

 6話から10話まで、ちょうど中盤にあたる5話は、基本的にメインストーリーとは直接関係のないエピソードが続く(7話や10話では最後は組織との戦いになるが)。

 この6話は個人的には特に好きなエピソードだ。

 早朝、と言っても、時計は9時半を差しているが、靄がかかっていかにも早朝と言う感じの空気。
  
 東東京刑務所の門が開いて、ガタイの良いひとりの男が出てくる。男は係官に一礼する。
  
 だいぶ前から塀の側で彼の出てくるのを待っていたらしい二人の若者、その男、早乙女哲治(福田健次)に急いで駆け寄る。
 サブ「兄貴ぃ」
 タツ「ご苦労様!」
 早乙女「おお、お疲れ」
 サブ「ああ、良かった……」
 サブは持参したコートを早乙女に着せる。
 早乙女は基本的に、あまりはっきり物を言わないと言う設定なのだ。

 なお、サブを湯田邦晶、タツを久保寺健之がそれぞれ演じている。劇中では役名は出てこないが。
 久保寺健之氏は、「不良少女とよばれて」で、東京流星会・西村朝男の腹心の部下を演じていた人だ。

 場面変わって、晴海警察署。
  
 ひとりの若い婦警がパソコンに向かって何やら捜査している。画面には関東を中心とした地図が表示されている。
 後の描写から、彼女、武藤萌(むとう もえ)は少年課に属する婦警らしいのだが、ここは少年課と言うより、各課共通のコンピュータールームだろう。
  
 と、建物中に響き渡るような「びゃあっくしょん!」が聞こえてくる。そちらに目を遣った武藤萌は、思わず笑みを浮かべる。
 画面左から藤原が現れ、バンと彼女の肩を叩きながら、「おい、むーちゃん、おはよう!」と声をかける。
 武藤「おはようございます」
 藤原は彼女のことをむーちゃんと呼ぶ。演じるのは加藤麻里さん。
 準レギュラーと言うほどの出番はないが、要所要所でそのキュートな魅力を遺憾なく発揮し、更に終盤では得意のコンピューター技能を駆使して、重大な情報をいづみにもたらしている。

 藤原「五条いづみのリストは見付かったかね?」
 武藤「少なくとも、関東地区には五条いづみなんて言う犯罪者はいません」
 藤原「はぁん」
 藤原、消えたいづみのファイルをまだ探しているらしい。
 武藤「古い事件掘り返すより、昇進試験の準備した方が良いんじゃないですか?」
 むーちゃん、振り向いて、
 「厄年でヒラ刑事って、藤原さんだけですよぉ」
  
 藤原「ふざけるなぁっ! デカは犯罪者捕まえてナンボだよぉ」
 そこでまた得意の(?)大きなくしゃみをしようとするが、スッとむーちゃんの手が伸びて、鼻をつまむ。
 武藤「分かってます。全国隈なく捜してときますから、風邪うつさないで下さい」
 藤原「良い子だ、止まった……いづみの奴、叩き上げを舐めると、痛い目に遭うぜ!」

 そのいづみ、依然として、倉庫街の空き部屋に勝手に住んでいた。
  
 携帯コンロでお粥のような物を温め、朝食の準備。
 だが、1話で施設を脱走する時にバックに入れてきた食糧はそろそろ底を尽きかけていた。
 残り僅かな乾パンやビスケットを漁りながら口に入れる。
  
 いづみがふと横を見ると、いつの間に現れたのか、佐織がそのお粥を食べていた。
 いづみ「あーっ」

 3話のバイク便の男同様、こういう程よいユーモアが、武上純希脚本の魅力である。
  
 佐織「いづみさん、これはなかなかイケます! もう少し砂糖が多い方が良いけど」
 佐織の寸評に、憮然とした表情でビスケットのかけらを口に放り込むいづみ。
  
 佐織「あー美味しかった」
 そのまま全部平らげて、無邪気な笑顔を見せる佐織。その後ろに恵子が現れる。
 恵子「いづみ、ちょっと付き合ってくれない?」
 いづみは無言で恵子を見遣る。

 ここでOPタイトルとなるのだが、今回から、5話の冒頭で「あらすじ」を担当した睦五郎(現・五朗)が、OPのナレーターを務めるようになる。今までは、OPナレーション自体なかったのだ。
 これも、視聴率低迷の為、テコ入れのひとつとして最初に大雑把な状況を説明しようということになったのか、当初からの予定だったのか、良く分からない。

 ナレ「五条いづみ、身に覚えのない殺人の汚名を着せられ、住み慣れた町を追われた。死んだと思われていたいづみは謎の組織で特殊な訓練を受ける。それは最終兵器として生まれ変わる為の、秘密プロジェクトだった。だが、いづみは実験途中で脱走し、謎の組織は抹殺指令を発動した。いづみは挑む、謎の組織の正体を暴く為に! そして奪われた青春を取り戻す為に!」
  
 ナレにあわせて、警官に追われ海に落ちるいづみ、
  
 組織でのバイオフィードバックプロジェクトの様々な訓練の様子、そして1話、3話での戦闘シーンなどが映し出される。

 その後、いつものバズーカ砲発射シーンからのメインタイトル表示はそれまでと同じである。


アバン Aパート Bパート 予告

 恵子を先頭に、海の側を歩く三人。
 佐織「恵子さん、何処行くんですか? 何処行くんでしょうね、いづみさぁん!」
 佐織がしきりに二人に話しかけるが、二人とも無言のまま。
  
 佐織「あれー、いづみさん怒ってませんー?」
 佐織の問い掛けに、いづみは少しだけ立ち止まって佐織の顔を見、ぷいっと顔を背けて再び歩き出す。
 食い物の恨みは恐ろしいのだ。
 佐織、首を傾げて、「あれ、あれぇーっ?」
 佐織「いづみさーん!」
 それでも走って追い掛ける佐織であった。

 ここで流れるA-JARIの「降りしきる雨の中、僕はただ君を待つ〜」と言う曲、なかなか良い曲だが、何と言うタイトルか勉強不足で分からない。他の場面ではあまり使われていない曲だと思うが……。
  
 このドラマではお馴染みのモノレールの高架下を抜け、一列になって歩く三人。
  
 やがて、目的地の建物に入っていく恵子。二人も何も聞かずに付いて行く。
 入り口の街区表示板には「芝浦三丁目」とあるが、恵子が案内する部屋は、あくまでスタジオの中のセットなので、三人が入って行った建物とは全然関係のない、それらしい建物に過ぎない。

 恵子「いづみ」
 いづみを促して中に入る恵子。そこは簡素なアパートの一室だった。
 恵子がブラインドを、佐織が奥のカーテンを開くと、部屋がパッと明るくなる。
  
 佐織「わー、きれいー」
 窓を開けて、景色を見る佐織、嘆声を放つ。
 そこから見えるのは、確かに芝浦の風景であろうが、これも全然別の場所から撮っている映像をつないでいる訳だ。

 正直、そんなに綺麗でもないが……。
 セット撮影時には、もっと綺麗な景色を見ている設定だったのかもしれない。
  
 恵子「何か、壁塗り替えたみたい……気に入った?」
 恵子がいづみに尋ねると、
 佐織が「はいっ」と元気良く答える。思わずガクッとなる恵子。こういうところも好きだ。

 恵子の台詞から、ここは以前から彼女がいづみの住まいとして目を付けていた部屋のようだ。5話のラストで恵子が言っていたのも、無論、この部屋のことだ。
 この時点でもう契約などは済ませているようなので、あくまで彼女か、彼女の親の名義で借りているのだろうが、その辺の詳しい説明は絶対にされない。
 あるいは、闇学中が以前より確保していた部屋のひとつなのかもしれない。2話でも、そう言う物件があることは語られているので、ありうることだ。

 だが、家賃は別にしても、敷金・礼金など、ある程度まとまった資金が要った筈で、それは誰が出しているのか、気になるところだ。劇中に手掛かりはないので想像するしかないが、恵子の家がかなりの金持ちだとしたら、恵子がいづみに贈ったカバンや教科書、制服などの件も含めて全て簡単に説明できるのだが、その割にバーガー・イン・サキにツケがあるので、辻褄が合わなくなる……。
  
 恵子「もう、佐織が気に入ったってしょうがないの!」
 佐織「だって、だってぇー、いいなぁ、いいなぁー」
 家の中を憧れの眼差しで見回しながら、部屋の中央へ移動する佐織。それに会わせるように、さりげなく恵子も部屋の真ん中に移動する。この辺はいかにもドラマと言う感じで、好きだ。

 佐織「恵子先輩とおんなじで、表はひどいけど、中身は素敵!」
 佐織の、必殺「口当たりの良い毒舌」が炸裂する。
 初登場時は気の小さい、大人しい女の子と言うイメージだった佐織だが、回が進むごとに、こういう図太さが目立つようになる。打ち切りにならなかったら、彼女の持ち味を生かしたエピソードもたくさん生まれていただろうに……。
  
 恵子は、自分を指差した後、コン! とかなり痛そうな音を立てて、佐織の頭を拳骨で叩く。
 「いづみ」では、こういう打撃のSEが全体的にやや大袈裟にも聞こえる。
 恵子「どういう意味それ?」
 佐織「いったぁーい、誉めたのにぃ」
 恵子「うふふっ」
 だが、その後、二人は顔を見合わせてくすぐったそうに笑う。いつの間にか仲の良い先輩・後輩になっているようだ。
  
 いづみも、そんな二人の様子を(あるいは真新しい内装を?)微笑ましそうに見ている。
 恵子「いつまでも、倉庫で寝起きするってわけには行かないでしょう」
 佐織(うん、と頷く)
  
 いづみ、だが、くるっと背中を向ける。
 恵子「いづみ!」
 いづみ「ありがとう。でもぉあたしには……」
 恵子「もう、カワイソぶりっ子はやめようよ」
 佐織「そうですよ」
 恵子の言葉に振り向くいづみ。
  
 恵子「いづみ、過去を取り戻したいんでしょう? しっかりリハビリして、青春を奪った奴らに見せ付けてやろうよ!」
 いづみ「でもぉ……」
 恵子「まだ気に入らないことがあるの?」
 俯くいづみを見て、佐織「どうしたんですか?」
 いづみ「家賃、払えない」
 ちょっと決まり悪そうに、だが、きっぱりと言ういづみ。ここでいきなり現実的な問題が出てくるのも面白い。
 だが、恵子は佐織と顔を見合わせてくすっと笑い、いづみの手に部屋の鍵を置きながら、
 恵子「アルバイト捜してあげるからさ」
 佐織「あたしも協力します」
 と、事も無げに言う。

 恵子、大きく頷いて、「いこっ」と佐織を促してさっさと部屋を出て行く。
 戸惑いや不安はあるものの、そこはそれ、自分だけの部屋に住めると言うことで、
  
 ここからしばし、ちょっとしたイメージ映像風になる。
 ベッドの上に指を遊ばせ、横になって微笑むいづみ。
  
 ふかふかのクッションの感触を楽しみ、勢い余って後ろの壁に激突してしまういづみ。めちゃくちゃ可愛い。
  
 最後に、勢いをつけて仰向けにひっくり返る。
  
 起き上がって、ふと入り口の方を見たいづみ、何を見たのか突然顔色が変わる。
 いづみの視線の先には恵子と佐織の引き攣った顔が……。そう、はしゃぐ様子をしっかり見られていたのだ。
 このタイミンクで、港のシーンからずーっと流れていた曲が一瞬ピタッと途絶える(直後にまた流れ出す)。
 シリーズ中でも最高に笑えるシーンのひとつだ。
 恵子「わ、忘れ物なんだ。ね、カバン忘れちゃって」
 佐織「ごめんね」
 恵子「ごめんねー」
 早口で言いながら、カバンを取って逃げるように出て行く。
 ただ、ここ、最初に廊下の左へ消えた佐織のお尻の影が、ずっと壁に映っているのがちょっとしたミス。
 実際はその奥には廊下はないので、女優はカメラから見えない場所に留まっていたのだろう。しかし、影のことを計算に入れていなかった。
 恵子は、右側に出て、ドアを閉める。
 その後、いづみは憂鬱そうな顔になり、そこにサブタイトルが被さるのだが、このカットは要らなかったかな?
 いづみの後ろ姿のままの方が良かったかもしれない。

 普通、ここはいづみも思わず笑ってしまうようなシーンだと思うんだけどね。
  
 アパートを少し離れた道路にて。
 佐織「恵子さん、あたしたち、見てはいけないものを見てしまったんじゃあ?」
 真剣な顔で話しかける佐織。
 恵子「今度いづみに会っても触れちゃダメだよ、今のこと」
 佐織「はい!」
 恵子「いづみのアルバイト探しに行こっ」
 元気良く走り出す二人であった。
  
 場面変わって、「銀座ヨットハーバー」と言うアクリル看板を思いっきり踏み抜くシーン。
 無論、これは番組で用意したものだろう。
 脚の主は、さっきの二人。水を得た魚のように暴れている。
  
 が、店の中から、騒ぎを聞きつけてガタイの良い従業員が飛び出してくる。
 「やめろお前、なにすんだ!」
 サブとタツはその従業員にとっちめられ、「あ、兄貴〜」と情けない声を出して画面外にいる早乙女に助けを求める。
 ここは、実在の店舗を借りて撮影していると思われる。

 ちなみに、この従業員、葉山タカシと言うのだが、演じているのは子役から活躍している安藤一人さん。趣味がラグビーとかで、それでこんな立派な体格になったのだろう。
 威勢の良かった葉山だが、早乙女の姿を見て怯み、じりじりと後ずさって、下の板張りの部分に落ちる。
  
 早乙女も身軽に飛び降りると、葉山の前に立ち、「フンッ」と右手を突き出してその頭を掴む。
  
 そしてそのまま、葉山の体を持ち上げると言う怪力を披露する。
 と、横から赤い物体が飛んできて、早乙女の手に命中、思わず手を放してしまう。
 赤い物体はバードコールで、投げたのは無論、恵子だった。
 恵子「やめなよ」
 サブ「闇学中の恵子!」
 彼らも恵子のことは知っている模様。
 恵子たちがタイミング良く現れたのは、闇学中のメンバーでもあるらしい葉山に、いづみの働き口を世話してくれるよう会いに来たということなのかもしれない。

 ちなみにほとんど使われることなく終わったバードコールだが、本来の使い方ではないにせよ、何かの役に立ったのはこれが2度目にして最後だったりする。
  
 恵子「早乙女!」
 まだ当分刑務所にいる筈の早乙女を見て、恵子も驚く。
 まともに喋れない早乙女に代わって、サブが告げる。
 サブ「兄貴の目的は藤原だぁ。奴が姿を現わすまで、ウォーターフロントをぶっ潰し続ける!」
 右の画像の後ろに停泊中のヨットが見えるので、やはりここはマリーナなんだろう。具体的にどういう商売なのか、よく分からないのだが……。葉山は多分、その中の飲食店で働いているのだろう。

 また、彼らがここを襲ったのは、この店を藤原が担当しているからと考えられる。少年課の藤原は、葉山などの闇学中関係者を残らずマークしているのではないだろうか?
  
 早乙女、サブの耳元に何か囁く。
 サブ、気が進まなさそうに親分の顔を見るが、早乙女に「うあぁー」と曖昧な声で促されて、仕方なく恵子に向かって、
 サブ「兄貴は電話番号をお聞きだ」
  
 恵子「ふざけんじゃないわよ!」
 当然の反応を示す恵子だが、早乙女は不器用にウィンクする。き、気持ち悪い。
 早乙女たちは意外とあっさりその場から離れて行く。
 恵子はすぐに葉山に駆け寄る。
 恵子「タカシ、大丈夫?」
 佐織「大丈夫?」
 葉山「ああ……」
 佐織、落ちているバードコールを拾って恵子に渡しながら、「あいつは?」
  
 恵子「ウォーターフロントで誰一人、闇学中も手も出せない凄い奴……藤原も終わりだねえ」

 後半になると、恵子たちも藤原へ親しみを見せるようになるが、この段階ではまだ彼らにとって藤原は目障りな刑事と言うことで、恵子の反応も冷たい。
  
 その藤原、署長に呼ばれて署長室のドアを開ける。
 藤原「何の用でしょう、署長」
 署長「藤原さん、暫く休暇を取ったら如何ですか」
 机の上に本を広げ、柔らかな物腰、如何にもインテリ風署長・沢田を演じるのは本郷直樹さん。
 このキャラも、4クール続いていれば再登場の機会が巡ってきたかもしれないが、実際はこの1シーンのみの出番。

 藤原「いやぁ冗談じゃないっすよ。今とてもそんな暇ねえんだ」
 署長「2週間の休暇を命じます。藤原刑事」
  
 藤原「どういうことですか?」
 藤原が机に手を付いて鋭く尋ねる。ここで、そのまま署長に理由を説明させず、続いてやってきた別のキャラの言動から藤原に事情を察知させるのがシナリオの工夫である。
 男「あのう、藤原さんは?」
 藤原「俺だ!」
 男はつかつかと藤原に近付き、メジャーで藤原のサイズを測り始める。
 藤原「な、なんだよ、おい、俺ぇ服の仕立てなんか頼んでねえぞ」
 男「棺桶屋でございます。早乙女哲治様と言う方からの特注を受けまして……」
  
 男の言葉に一瞬小首をかしげる藤原、すぐその意味に気付いて「この野郎!」と男を廊下へ蹴り飛ばす。
 棺桶屋……ま、実際は葬儀屋なんだろうが、演じているのは小山昌幸さん。脇役でちょいちょい東映作品に出てくる。
  
 藤原「早乙女哲治、まだ半年は臭いメシ食ってるはずじゃ?」
 署長「早乙女は今朝、刑務所を出ました。模範囚としてね」
 藤原「えっ……」
  
 明敏な藤原はすぐ署長の意図に気付く。
 藤原「なるほどね、休暇中に殺されれば、関わりがなくって良いって訳か。ったくもう、大学出のエリートはさすが、頭が切れますなぁ
 「頭が切れます」の台詞に合わせ、自分のこめかみを指で差し、ついで手の平を広げて見せる藤原。署長の頭がプッツンしているとでも言いたいのだろう。
 署長は帽子のひさしを拭きながら、何食わぬ顔で聞いていたが、出て行こうとする藤原を呼び止め、
 「休暇中は銃を返してくださいね」と、一言。
  
 今回は、「謎の組織」とは全く関係のないストーリーなので、石津の出番はなさそうだが、やや強引にその出番が作られる。
 電話を鳴り、受話器を取る石津。例によって、意味もなく影に包まれている。
 吉岡「警察コンピューターで五条いづみをアクセスした者がいます。追跡の結果、コードナンバーA1093、晴海署内の端末機だと分かりました」
 石津「うん……」
 何となく元気のない声を出す石津。電話を置いてから、「藤原か……」
 そして、窓から海を見る。別に意味はない。

 吉岡の声は、2話でいづみを監視していた加藤照男さんだと思うが、クレジットには出てこない。
 軍事クーデターを起こそうと企んでいるだけあって、彼らは警察コンピューターを日頃から監視下においているようだ。
 署長室から出てきた藤原に、むーちゃんが声をかける。書類の束を渡して、
 武藤「隅から隅まで捜しましたけど、五条いづみなんて言う名前はありませんでした」
 藤原「そう、なかった。はい、ありがとう」書類を突き返して、「見付かるまでやり直してください」
 無情の宣告をして歩き出す藤原の背中に、「くたばれ、万年ヒラ刑事!」とむーちゃんが小さな声で罵る。
  
 藤原が振り向くと、たちまち笑顔になって手まで振ってみせるむーちゃん。なかなか良い根性をしている。
 この加藤麻里さんの表情豊かな演技、ストーリー上は全然重要ではないのだが、自分は大好きだ。
  
 次は、恵子の台詞によって、早乙女についての説明。
 恵子の声「早乙女哲治って奴のことなんだけど、いつもは無口だけど、一旦怒ると二の腕のサソリが赤く染まって、もう誰も止められなくなる。サソリの哲……」
 実際に、サソリの刺青(?)が黒から赤へ変わるイメージ、そして別のチンピラをぶっ飛ばし、咆哮するイメージ。
 恵子の声「ある日ぶらりとウォーターフロントにやってきて、あっという間にチンピラたちを従えてしまったの。弱気な警官は見て見ぬふりをしていたんだけど、それをあの藤原の奴、つまらない賭博容疑で無理矢理パクっちゃったの」

 ウォーターフロントの警官は、みんな気が小さいらしい。

 ここは、嘘でも何かそれらしい理由(バックに大物が付いているとか、親が有力者だとか)が欲しかった。
 また、チンピラたちを従えていた割に、出所の際にあの二人しか迎えがなかったと言うのはちょっと寂しい。まあ、逮捕される前はもっとたくさんいたのだろうが。
  
 早乙女、パチンコ店でせこく玉を拾っていると、左腕にガシャッと手錠がはめられる。
 驚いて振り仰ぐと、藤原の得意そうな顔。
 藤原「へへーっ、賭博容疑で逮捕!」

 しかしこのシーン、ぼんやり見てると「あれ、パチンコって違法だっけ?」と一瞬混乱してしまうのは管理人だけだろうか?
 この後、早乙女はちゃんと刑務所に入れられているのだから、未成年ではなく、パチンコを打っていること自体は別に問題ではない。よって、恵子の言う「つまらない賭博容疑」と言うのは、それとは全然別の行為を差すのだろう。

 なお、藤原の台詞などから、早乙女の刑期は少なくとも1年はあったと思われる。だが、恵子の言う「つまらない賭博容疑」くらいで、いきなり1年も実刑を喰らうだろうか? 逮捕されたのも初めてなら、初犯に決まっているのだし。
 恵子が説明している相手は、佐織といづみ。場所はバーガー・イン・サキの奥の部屋である。
 佐織「それであの人藤原刑事を……」
  
 葉山「そのとばっちりで店をめちゃくちゃにされたんじゃあ、たまんないっすよ」
 そこには、葉山もいて、氷を詰めた袋で顔を冷やしている。
 祥子「コイツんところだけじゃないんです。藤原の担当する地区の店は軒並みやられてるんです!」
 横から現れた祥子も強く訴える。

 彼らの話し方からして、葉山は見掛けより年下のようだ。実際は、安藤さんは当時23くらいの筈だが。
 それを受けて、
 恵子「闇の学生中央委員会の大きな使命は、ウォーターフロントの秩序を守ること」
 これは、劇中で唯一語られる、具体的な闇学中の存在理由である。
 恵子「……でも、奴だけには手が出せない」
  
 アイ「このままじゃあ……」
 立ち上がって喋ろうとするアイを押しのけ、マーコ「このままじゃ闇学中の面目丸潰れっス!」

 しかし、いづみの茶、恵子の青、佐織の赤、祥子のピンク、アイの緑、マーコのグレイと、綺麗に服の色が被ってないのが、いかにもドラマである。
  
 恵子「こういうこと、いづみ、あたしたちに手を貸して! あなたの力なら奴らをこの町から追い出せるわ」
 佐織「そうよ、あの乱暴者、町からつまみ出しちゃってぇ!」
 二人が、代わる代わるいづみに頼む。
  
 当然、祥子やマーコたちは、いづみが快諾してくれるものと期待を込めて頷くが……、
 いづみ「できないわ」

 きっぱりと断る。
 恵子「いづみ、あなたなら!」
 恵子が重ねて言うが、
 いづみ「私の力は、チンピラ同士の喧嘩には使えない!」
 恵子は、いづみの「チンピラ」と言う言葉に敏感に反応する。
 恵子「チンピラ同士? 闇学中がチンピラだって言うの?」
 聞き捨てならないと言う感じに、いづみを睨み付ける。祥子たちも険しい顔付きで恵子の後ろに立つ。

 いづみも、内心、失言だったと後悔していたかも知れないが、折り良く、表の方からグラスの砕ける大きな音が聞こえ、その問題はうやむやになってしまう。
  
 カウンターの上で砕けるグラス。
 健「てめえらなにすんだよーっ!」

 予想されて然るべきだったが、サキにもその早乙女たちが現れたのだ。
 ただし、さっきと同様、最初はサブとタツの二人だけ。
 この時点で、カウンターや台の上にスツールが上がっているが、これが如何にも傷が付かないようにソッと置かれたと言う感じなのがちょっと笑ってしまう。このシーンは実際の店舗を借りて撮影しているので、間違っても傷を付けたりしてはならないのだ。よって、最初のグラスが砕かれたカウンターも、店とは別の場所で撮影しているのだろう。

 健はキューを掴むと、それでタツとサブを簡単に叩きのめす。相変わらず弱っちい二人であった。
 ま、健も(闇学中メンバーではないが)以前は結構ワルだったらしいので、それなりに喧嘩の場数は踏んでいるのだろう。
  
 しかし、サブの「兄貴ぃ」と言う呼び声に、外で出番を待っていた早乙女が余裕たっぷりに入ってくる。
  
 健は果敢にも「早乙女ーっ!」と叫びながら、キューを思い切り早乙女の胸板に叩き付ける。
 しかし、キューはあっさりと折れ、「あ、あれっ」と間の抜けた声を出す健。
 と言っても、元々このキューは分解式なので、壊れたわけではない。
  
 早乙女、殴られたところを手で払う仕草をしてから、健の胸倉を掴み、そのまま垂直に持ち上げる。無論、これも上から吊っているのだ。
 健「放せよ、この野郎ーっ!」
 騒ぎを聞いて、恵子たちが店の奥から出てくる。早乙女は健の体を投げ飛ばす。
  
 健は壁に打ち付けられ、頭を押さえてへたり込む。
 佐織「いづみさん、ほっとくんですか、あんな奴ほっといて悔しくないんですかぁ?」
 見かねた佐織が、いづみの腕を取って訴える。
 だが、いづみは目を伏せて動こうとしない。
  
 サブ「恨むんなら、姿を現わさない」
 ここで、三人揃ってくるっと振り向き、
 サブ「藤原を恨むんだな」
 今回は全体的にコミカルな演出が多く、見飽きない。

 そのタイミングで、「おい、いい加減にしとけ」と、その藤原の声が飛んでくる。
 みんなの視線を受けて、藤原が颯爽と登場。
 藤原「お前を逮捕する! ……ことはできねえんだ。俺は今休暇中でなぁ」
 サブ「やっと現れやがったな」
 早乙女、首、そして指を鳴らして、即座に決着を付けようと前に出る。

 藤原「いやいやいや、今日はやめとくぜぇ、俺とお前の問題に善良なお坊ちゃん、お嬢ちゃんたちを巻き込むのはイヤだからな」
 そう言って、藤原、さっさと出て行こうとする。
  
 早乙女、慌てて思わず「ま、待て!」と叫ぶ。早乙女がはっきりと台詞を言うのは、このシーンだけである。
 藤原、振り向いて早乙女を睨み付ける。こうして並べると、貫禄の差が顕著である。
 藤原「逃げるんじゃねえよ。男同士、プライドを賭けた勝負だ。場所変えようじゃねえか」
  
 早乙女、サブの体を引き寄せてごそごそと耳打ちする。
 サブ「おい、警察手帳を置いていけ。それなら兄貴も条件を飲んでいいと仰ってるぜ」
 藤原「ふざけるんじゃねえ! 刑事の命をてめえらみたいなチンピラに預けられるか!」
  
 その言葉に本格的に切れた早乙女、腕のサソリが赤く染まる。
 手近の植木鉢を持ち上げて暴れようとする。健が再びむしゃぶりついて「やめろ、店が……」と止めようとするが、あえなく蹴られて元の場所にぶっ飛ばされる。
 それを見て、いづみの表情が厳しくなる。藤原が何も言わなければ、早乙女と戦っていたかもしれないが、
  
 藤原「くれてやるよ!」
 と、あっさり前言を撤回する。
 警察手帳を取り出し、名残惜しそうにもてあそんだあとで、サブに向かって放り投げる。

 サブ、手帳を受け取り、「へっへっへっへっ」
  
 藤原「いいか、明日の朝6時、13番埠頭で勝負をつけてやる。それまで大事にしまっとけ、この野郎、シミでも付けてみろ、タダじゃおかねえぞ!」
 それだけ言って店を出て行こうとする。
 サブ「逃げろ逃げろ」
 タツ「臆病者」
 サブ「へっへっへ、そんときはお前の代わりにこいつがズタボロになるぜ」
 藤原、サブの襟首を掴んで、「なにぃっ」
 早乙女、抱えた植木鉢を藤原に振り下ろそうとする。
 藤原「おいっ、せいぜいでかい口利いてろ! 明日の朝、可愛がってやるぞー」
 捨て台詞を残し、去っていく藤原。
  
 その後、また奥の部屋に戻ってくる恵子たち。
 恵子「さっきの見たーっ」
 マーコ「見た見たーっ」
 ここは、一度に複数のキャラが喋っているので、正確に台詞を書き取るのは不可能だ。
 とにかく、健といづみを除く5人が、やたら盛り上がっているのだ。
 恵子の「見た」と言うのも、何なのかわからない。早乙女のサソリが変色するところだろうか?

 葉山「なにっ?」
 マーコ「だから、だから、だから、だから! 藤原と早乙女が相討ちしてくれればいいわけよ、そうすれば、ウォーターフロントの問題なんて全て解決だよねえ」
 恵子「言えてる言えてる」
 アイ「福の神よ、サヨナラーってね!」
 アイのお得意のギャグが炸裂し、一瞬静まり返る面々。

 (誰が言ってるのかはっきりしない)「疫病神でしょうが!」
 恵子&マーコ&佐織「ばぁ〜〜〜かっ!」
 アイ「恵子さんのイジワルぅ」
 祥子「マジでこいつらすっごい……」
 この辺も、とにかく聞き取りにくい。祥子の最後の台詞以降は、さっぱり分からない。

 いかにも若い女の子たちがワーキャー騒いでいる様子が出てて、好きなシーンなのだが、恵子たちがアイをバカにするところは、言い方がキツ過ぎて、見てて少し不快だ。
 彼らのやりとりを無言で聞いていた健、
 「あんまり藤原のこと笑うなよ、奴、この店の為に男のプライド捨てたんだ。半端な奴じゃ出来ねえよ」

 健の台詞から、最後の馬鹿笑いは、藤原のことを笑っていたらしい。
 また、健の台詞と同時に、A-JARIの「長い夜」(?)と言うバラードが流れ始める。
  
 恵子「あいつカッコつけてるだけだよ〜」
 恵子は笑顔で応じるが、振り向いた健の顔を見て、真剣な表情に変わる。
 健「所詮女にはわかんねえよ」
 健はそれだけ言って、部屋を出て行く。入り口のところで、一瞬いづみと視線を交わすのも良い。
  
 次のシーンでは、健が、何処かの空き地でドラム缶の上にビール缶や酒瓶を並べ、キューを刀のようにして振り回して叩き落している様子が映し出される。
 健、藤原に加勢して早乙女たちと戦うつもりなのだ。これはその即席のトレーニングであろう。
 その様子を最初いづみが見ていて、すぐに恵子と佐織もやってくる。
  
 健の必死な姿を見ても、
 恵子「健ってほんと単純なんだから!」
 佐織「ほんとですねえ〜」
 と、二人は相変わらず茶化したような態度を変えない。
 そんな二人を物言いたげな目で見るいづみ、しかし口に出しては何も言わない。
 今回、特に台詞の少ないいづみだが、その無言が、ドラマ上でとても効果的に働いている。
 同じ頃、藤原は警察の独身寮で、
  
 葉巻をくわえたまま、手錠にロープを結び、輪投げのようにビール瓶に向かって投げる練習をしていた。
 2本のビール瓶を早乙女の足に見立て、手錠を嵌めようと言う作戦だろう。
  
 熱中するあまり、瓶にぶつけて割ってしまう。何故か、中身のある瓶を使っていたので、ビールが床に流れる。
 藤原「あーあ、勿体ねえな」

 ま、実際は、手錠を投げたくらいで、こんなに派手にビール瓶が割れることはないと思うが……。
  
 いづみ、考えたらこの部屋で寝るのは初めてなのだが、夜になってもベッドに座ったまま、横になろうとしない。
 窓から入る電車の音を聞きながら、「優し過ぎるよ、みんな」と、心の中でつぶやく。

 全編を通しても印象的な台詞である。「長い夜」は、Aパートの最後まで流れている。



アバン Aパート Bパート 予告

 翌日の明け方、サキで夜明かししたのだろう、健がキューを分解して細長いケースに入れ、ジャケットを羽織る。
 そのケースは、5話で健が持っていたものと同じものだ。
  
 健「よしっ」
 まだ薄暗い中、店の前に出て、気合を入れる健。待っていたように、「おはようございまぁす」と、佐織の声が飛んでくる。
 やはり、健のことをほっておけなかったのだ。
 健「なんだよ、お前」
 恵子「マッポの為に、命張ろうって言うバカがいるって聞いてね!」
 健「男の世界に口挟むんじゃねえよ」
 恵子「男、男って偉そうに、ウォータフロントの友情に男も女も関係ないんじゃないの?」
  
 恵子の言葉に、健も笑みを見せる。
  
 横で聞いていた佐織、「二人とも気取っちゃって、レッツゴー!」と、元気に右腕を突き出し、
 先に立って歩き出す。そしてこのタイミングで、「エスケープ!」の特徴的なイントロが流れ出すと言うのが神業的な選曲である。管理人、このシーンが大好きなのだ。
  
 藤原、ひとりで13番埠頭へ向かっていたが、途中、健たち三人がフェンスの向こうに背中を向けているのに気付く。
 藤原「なんだ、てめえら」
 三人、振り向く。
 健「昨日の礼って訳じゃないけどさ、及ばずながら、助っ人するぜ」
 ケースを叩いたり、顔の前で指を動かしたり、細かい仕草を交えた湯江氏の演技、好きだわ。

 藤原「チェッ、しゃらくせえ」
 藤原はさっさとひとりで歩き出す。
  
 決闘場所へ着く頃には、だいぶ明るくなって、港湾施設ではもう作業が始まっていた。
 藤原を先頭に、肩をそびやかして歩く健たち。
 不意に藤原が止まり、健が藤原に、後ろを向いておしゃべりしていた恵子が健に、それぞれドミノ式にぶつかる。このちょっとした動きも好きだ。さっきから好き好きばっかり言っているが、好きだからこんなレビューをしているのだ。
  
 藤原の前に、いづみが腰掛けて待っていた。
 恵子たちはすぐにいづみに駆け寄る。
 佐織「いづみさーん」
 恵子「いづみ!」
 健「よっ、いづみ、来たな」
 恵子「やっぱり来てくれたんだ」
 声を弾ませる恵子たち。ほんとに仲の良さそうで、心がほっこりする。

 藤原「俺が倒されんのを期待してんのか?」
 佐織「いづみさん、助っ人に来てくれたんですよね?」
 藤原「ケッ!」
 少し前には、銃を突きつけていた相手なので、藤原の反応は当然だ。
 佐織「そうですよね!」
 佐織が念を押す。
 いづみ、口を開きかけて何か言おうとするが、
 横から恵子が「いづみ、アルバイト探してるの!」
 恵子の言葉に、「えっ?」と言うように戸惑いの顔になるいづみ。ただし、実際は無言。この一連のシーンでも、いづみの台詞は極めて少ない。
 藤原「へっ、ハイエナだな、まるで、お前らしいぜ……あれえ、怖気付きやがったかな」
 早乙女たちがまだ来ていないのを見て、期待するようにつぶやく藤原。
 だが、次のカットでは、早乙女が二人の手下を引き連れてやってくる。
 あっという間に、辺りがだいぶ明るくなっているが……。

 早乙女、本当に藤原の為の棺桶を作らせたようで、サブとタツがロープで引っ張っている。
  
 藤原、不敵な笑みを浮かべて皮手袋をはめる。
 サブが、いづみたちを見て「あいつらはなんだ?」とイチャモンをつける。ま、特にタイマンとは言ってないんだけどね。

 藤原「ハイエナさー、気にするな」
  
 藤原の言葉に、恵子と佐織が同時に後ろを向いて健の顔を指差し、
 恵子「お前だよーっだ!」
 と叫ぶ。
 それを受けて、健も「おうおうーっ」と吠え声を上げ、何故か恵子と佐織も「ほうほうーっ」と和する。
 正直、訳が分からないシーンである。

 なお、この台詞、佐織が言ってるのかと思ったが、さすがに年上の健に対し、「お前」とは言わないだろうから、これは恵子が言っているようだ。
  
 その声に苦笑を浮かべる藤原。一方、早乙女は唖然とする。そりゃそうだ。
 藤原「おい、警察手帳は?」
  
 藤原の問い掛けに、サブとタツは「へへへへ」と得意そうに笑い、棺桶の蓋を開き、敷き詰めてある白菊の花びらの中から警察手帳をつまみあげ、再び落とす。

 藤原「ほー、凝った趣向だ」
 早乙女「いーっひっひっひっひひひひっ」
 不気味な笑い声を立てる早乙女。
  
 藤原「だけどよ、寸法が少し小さ過ぎるんじゃねえか、あん、おめえさんの棺桶にしちゃあよ!」
 藤原の挑発に、一瞬で沸騰する早乙女。当然、両腕のサソリが赤く染まる。
 ジャケットを脱ぎ捨て、「ごん、ぐっ、ぐむっ、ぐわーっ」と表記不能の奇声を発しながら、藤原に向かって突進する。
  
 藤原は待ってましたとばかり、一晩練習した手錠投げの腕を披露する。もっとも、藤原が狙っていたのは足でなく、腕だったが……。
 手錠は見事にかかるが、早乙女は「へへへへっ」と余裕の笑い。そのまま逆に藤原の体を引っ張り始める。
 藤原「あらら……おおお」
 必死で耐えようとするが、たちまちスルスルと引き寄せられてしまう藤原。
 ここは、スケボーみたいなものに役者が乗って撮影していると思われる。
  
 早乙女、何故か藤原の顔を舐め上げてから、空中へ藤原を投げ飛ばす。
 シートを被せてある資材の上に勢い良く叩きつけられる藤原。言うまでもなく、これはスタントである。
  
 藤原「ぐわっ、あっちゃ……」
 早乙女、続けて飛び掛ってくるが、藤原は間一髪でかわす。
 早乙女がロープに絡まって動けない隙に、藤原はいづみたちのところへ走る。
 戦いの様子を見守っているいづみたち。
 健、あんた助太刀するんじゃなかったの?

 この辺で、フルコーラスの「エスケープ!」が終了。代わって、BGMの「ESCAPE」のイントロがスタート。
 藤原「お前、いくらでアルバイト受ける?」
 藤原、あっさりと「男のプライド」をかなぐり捨てて、いづみに助けを求める。
 恵子「いいのっ?」
 藤原「ケースバイケースだよ、いくらだよーっ?」
 恵子、嬉しさのあまりパチパチと手を叩く。
 しかし、ついさっき「ハイエナだ、気にするな」とかかっこよく言ってた割に、この豹変はあまりに情けない。サブとタツがそのことでクレームをつけないのが不思議である。

 ここは、
 最初は藤原有利→サブとタツが加勢する→藤原ピンチ→いづみたちに泣きつく
 と言う展開の方が、なお良かったかな。
 早乙女を気にして急かす藤原に、いづみではなく佐織が答える。
 佐織「家賃、一月分!」
 これはいづみの部屋の家賃と言うことなので、理解できるのだが、
  
 健「プラス、グラス代!」
 尻馬に乗って健が自分の要求を出すのは、いささか虫が良過ぎる。
 佐織ではなく、健の言葉にいづみが勢い良く振り返るのは、そのせいかもしれない。
 それに対する藤原の「ようし、○○○○、手を組もう」の○○○○の部分、何回聞いても分からない。「バイナス」みたいに聞こえるのだが、なんて言ってるんだろう?
 まあ、藤原がその取引に手を打ったと言うことは分かるのだが。
 そうこうしているうちに、早乙女が立ち上がり、木枠にロープを引っ掛けたまま、凄い勢いで突進してくる。
  
 恵子「現金払いよ!」
 恵子がすかさず念を押す。藤原は「うしっ!」と快諾する。
  
 藤原たち目掛けて、早乙女が突っ込んでくる。恵子、健は右側へ、佐織、藤原は左側へ、いづみはドラム缶の上でジャンプして、それぞれ早乙女の体当たりをかわす。勿論、いづみだけスタントにスイッチしているのだが。
  
 早乙女、派手にドラム缶の山を崩す。いづみは着地すると同時に前転する。
  
 振り向くと、五十嵐いづみさん本人に戻っている。
 サバイバル・ソーのリングを持ち、一方のリングを体の前に垂らす。
 藤原、ロープつき手錠を再び手にするが、いづみのポーズを真似て、手錠を足元に垂らす。
  
 再度突進してくる早乙女。いづみは直前で体を回転させてかわし、早乙女は後ろの藤原に激突する。
 いづみ、サバイバル・ソーを投げて、早乙女の足に絡ませる。
 いづみ「足を!」
 久しぶりにいづみの台詞。

 今回、ほんといづみの台詞が少ない。全部で6つか7つくらいか?
 藤原「ホイ来たっ」
 藤原、すぐさま自分の手錠を投げ、ロープを反対側の足に絡ませる。
 左右から引っ張られて、身動きが取れない早乙女。サブとタツは何やってんだ?
  
 藤原「よし、せーのっ」
 二人は早乙女の前に回り、藤原の声にあわせて思いっきり足を引っ張る。
 早乙女の巨体が宙を舞い、コンクリートに背中を強打し、あえなくダウンする。
 いささか呆気なさ過ぎる気もするが……。
 藤原「やったーっ」
 嬉しそうにいづみを見る藤原。後ろでは、何もしてないのに健が親指を立てている。
  
 しかし、次の瞬間、恵子が悲鳴を上げ、健が「あぶねえっ」と叫ぶ。
 ダウンした筈の早乙女が厳しい顔をして垂直に立ち上がる。
 藤原「おっおお」
 思わずいづみも身構えるが、
  
 早乙女はそのまま手前に倒れ込んでしまう。
 藤原「やっぱりやった……」
  
 次のカットでは、藤原が棺桶の中から警察手帳を拾い上げ、代わりに気絶した早乙女の体が横たえられる。
 芝居とは言え、棺桶、それも白菊を敷き詰めた本格的な棺桶に寝るのはあまり気持ちの良いものではなかっただろう。
  
 「兄貴ぃ、こんなんなっちまってまったく」「情けねえなあ」
 ぼやきながら、しおしおと棺桶を曳いて退散するサブとタツ。もっとも、早朝の刑務所の前で待っていたくらいだから、この後も早乙女のそばを離れなかったことだろう。

 しかし、早乙女は別に死んだわけでも、刑務所に送り返されたわけでもないので、早乙女問題がこれで片付いたわけじゃないと思うんだけどね。

 藤原「いいか、二度とこの街に現れるんじゃねえぜ!」
 二人がかりで倒したくせに、威勢の良いタンカを切る藤原。

 あれこれやっているうちに、すっかり日が高くなっている。
 こういう野外での撮影は、時間との勝負なので、なかなか大変だったろう。
  
 藤原、やおら振り向いて、内ポケットから長財布を取り出し、いづみに放り投げる。
 藤原「いいか、これでお互い貸し借りなしだ」
  
 藤原「水っぽい、美しい友情とかは願い下げだぜえ。俺は明日からまた、お前を追う!」
 藤原の台詞が終わると同時に、五十嵐いづみの「さよならの迷路」がスタート。
 恵子たちは入れ違いにいづみに駆け寄る。藤原、一瞬、健や恵子と目を合わせる。
 しかし、健、あの必死の形相でキューを振り回していた訓練は一体なんだったんだろう?
 健「いづみ、やるじゃんかよ」
 恵子「素敵ぃーっ」
 藤原「ふっ、こいつらも結構いい奴らだ」
 いづみを囲んではしゃいだ声を上げる恵子たちを見て、つぶやく藤原。

 正直、この台詞は余計だ。わざわざ藤原に言わせなくても、藤原がそう感じていることは顔を見れば分かるからね。

 健「いいバイトになったな!」
 佐織「うん!」
 恵子「いくら入ってるかな、いくら」
 健「そうだよ、見てみろ見てみろ」
 恵子「開けてみようよ」
 藤原、何故か気まずい顔で、そそくさと歩き出す。
  
 健「開けてみろ、いづみ」
 健、いづみの肩を叩いて促す。いづみは財布をじっと見詰める。じれったそうに横から恵子が取って、中を調べる。
 だが、財布から出てきたのはたったの3000円……。

 恵子「3000円だぁーっ」
 佐織「これっぽっちぃ?」
  
 健、札を掴むと、「詐欺だぁーっ! これじゃグラス代も払えねえよ!」と、逃げていく藤原に向かって吠える。

 ……しかし、冷静に考えたら、健はその前に藤原によって助けられてるんだよね。そもそも、その恩義に報いる為の助勢だった筈で、こんなに怒り狂うのは……? 第一、これはいづみの報酬であって、健の金ではない。
  
 佐織「嘘つきー、これじゃ家賃も払えないじゃないのーっ!」
 恵子「こんな大きい財布の癖に3000円しか入ってないなんてせこいよーっ!」
 金切り声を発する佐織と恵子。健、左手に持った札を右手の指で弾きながら、
 健「詐欺罪で逮捕するぞぉーっ!」
 がなりたてる仲間たちと対照的に、いづみはあくまでとほんとしていた。……可愛い。
 藤原、サングラスをかけ、「やっぱりあいつらハイエナだ、ハイエナ!」
 踵を返して走り出す。恵子たちの「逮捕だーっ」と言う声が追ってくる。
  
 その場で止まり、悔しそうにその場で足踏みする。
 藤原「うるせぇーっ! ケッ」
 そして再び疾走する。
 次のシーンでは、いづみの部屋で、シートの上に大量の硬貨が広げられている。
  
 恵子と佐織が、空き瓶の中に詰まった硬貨を出しているのだ。
 恵子「いづみの活躍を知ってさあ、被害に遭った店の人たちがカンパしてくれたんだぁ。24時間テレビの為に貯めてた奴」
 佐織「凄いですよ先輩、一年間の家賃分くらいありますよ、きっと」

 恵子の言う「24時間テレビ」は勿論、日テレの「愛は地球を救う」である。翌1988年に第11回目を迎える。
 しかし、「一年間の家賃分」と言うのはさすがに大袈裟ではないだろうか? その家賃がいくらなのか不明なのだが、12ヵ月分だとどんなに少なく見積もっても50万以上になるだろう。しかし、見たところ、せいぜい5万円くらいしかなさそうだ。
  
 恵子「これなら上手く行くよ、事件解決業って儲かるよ」
 身を乗り出す恵子。
 佐織「それ賛成です。普通のアルバイトよりずっといいですよね」

 しかし、厳密には、今回3000円しか貰ってないんだけどね……。
 二人の言葉に目を見張るいづみ。
 期待を込めていづみを振り返る二人。目がキラキラしてますね。
 いづみ「ダメーッ! 今回のは特別だったの!」
  
 恵子「そんなこと言わないでさ、あたしがマネージャーやったげるからさぁ」
 いづみ「ダメ!」
 佐織「電話ボックスにカード張って、依頼人募集しちゃったりして……」
  
 佐織の言葉に、恵子、立ち上がって、「じゃあ、電話入れなきゃ!」

 今は昔だが、昔は固定電話を入れるのに箆棒な初期費用がかかったのである。
 いづみ「ダメだってーっ」
 佐織「いづみさん、お金は大切ですよ」
 恵子「老後のことだって考えなくちゃ」
 二人、いづみの叫びを無視して勝手に話を進める。この、二人が頼まれもしないのにあれこれといづみの面倒を見るのは、中盤でよく見られるシチュエーションである。
 いづみ「ダメーッ!」
  
 頑なに拒絶するいづみ。
 恵子「いづみぃ」
 佐織「いづみさぁん」
 いづみ「いやっ!」

 腕を組むいづみを映しつつ、「つづく」のであった。
 「さよならの迷路」は、最後まで流れている。

 と言う訳で、

 テンポの良いストーリー、適度に挿入されるユーモア、そして爽やかな友情を美しい映像と共に描いた娯楽作である。
 むーちゃんが初登場したり、藤原と恵子たちの距離が縮まったり、いづみが倉庫を出て部屋に移ったり、事件解決業の話が浮上したり、転機の多いエピソードでもある。

 また、いづみが一度もバイオフィードバックを発動させない、珍しい回なのだ。他では、前後編の前編に当たる4話くらいか?



アバン Aパート Bパート 予告

 今回の予告編も、恵子と佐織の二人の掛け合い。

 佐織「恵子さん恵子さん、今度は北洋高校が狙われてるんですか?」
 恵子「だからいづみを潜り込ませるの」
 佐織「えーっ、ひとりでですかぁ、佐織しんぱーい」
 恵子「大丈夫、いづみのあの力さえ使えば」
 佐織「いづみ先輩って一体どうなってるんでしょうねー」
 恵子「次回『少女コマンドいづみ』、他のチャンネル回すなよ」
 佐織「はい、佐織も絶対見ます!」

 映像面では、ほとんど違いはない。
 唯一、闇の中に大道寺の顔が浮かび上がるカットがあるが、これは本編にはないものだ。