コマンドーとターミネーターが戦うと言う、冷静に考えたらかなりめちゃくちゃなサブタイトルである。
今回、初めて晴海学園内部が舞台になるが、これは第1回目の視聴率が予想以上にふるわず、早くもテコ入れの必要が生じたため、急遽考えられた設定の変更だと言う。つまり、当初、学園は基本的に舞台にはならない予定だったと言うことだろうか。もっとも、4話以降も、学園内部が舞台になるエピソードは実は多くない。4話の前半に、7話(別の高校だが)くらいしか見られない。他に11話で試験、12話でプロムと、学校行事がストーリーに絡む程度である。

それはさておき、今回もアクションシーンから幕開け。
廃工場の敷地のようなところで、ザクッと靴音を響かせて立ついづみ。

そしていきなり爆発! 同時に「ESCAPE」が流れ出す。
襲い来る銃撃や手榴弾を避けながら、懸命に走るいづみ。無論、ここも五十嵐いづみ本人が太腿もあらわに演じている。
右隅にデジタル時計のようなものが見えるが、それが今までとはちょっと違うところ。

物陰に身を隠すが、その足元に手榴弾が転がってきて、急いで逃げる。
いづみが離れた直後、巨大な炎が上がる。ここも女優本人がやるにしては、結構危険なアクションのように見える。

建物内部に入ったいづみを、二人の兵士が攻撃するが、いづみはあっさりと叩きのめす。
この蹴りと言い、肘打ちと言い、アクション専門の俳優のようにサマになっている。

やがて、目指す部屋に辿り着いたいづみ(何故かここからデジタル表示が消える)、縛られて向こうを向いて座っていた女子高生に手を掛けるが、それは人形であった。

ハッとするいづみ、と、天井からガスマスクを付けた兵士が飛び降りてきて、スティック状の武器でいづみを攻撃する。

身動きできないいづみに、別の兵士が近付いて銃からガスを噴射させる(ここでまたデジタル表示が復活)。
いづみ、意外なほど呆気なく失神する。
と、ここで、画面が石津の影に覆われたアップに切り替わる。

石津「捕虜奪還のシュミレーションは、21分13秒で諸君の勝利だ……しかし」
どうやら、今までの映像は過去に撮影された訓練の様子だったらしい。
石津の前に、三人のガスマスク兵士(ターミネーター)が立っている。
さらに、カットが不自然に切り替わって、倒れているいづみの顔が、天知茂の明智小五郎のようにべりべりべりと剥がされ、全く別の女性のものに変わる。
つまり、敢え無く訓練で失敗をしたのはいづみではなく、別の女性兵士だったというわけ。
しかし、はっきり言って、いづみに化けさせて訓練をする必要は全くない。
彼女も、バイオフィードバックの実験に選ばれた一人だったのだろうか? 劇中ではダミーと呼ばれているが。
石津「かつてこのシュミレーションを11分09秒でクリアした兵士がいた……コードネームはいづみ」

初耳らしく、石津の言葉に少し驚く三人。
と言うことは、いづみがかつて訓練を受けたときは、別の兵士を相手に戦ったと言うことか?

石津「いづみを捕虜奪還プログラムでテストせよ。11分09秒をクリアしたら回収、出来なければ破壊しても構わん」
石津の命令に、軍隊式の敬礼をする三人。
しかし、石津の指示には納得行かないところがいくつかある。
まず、基準となっている11分09秒は、いづみ本人が出したレコードなのだから、その自己ベストと比べてもあまり意味がないだろう。そもそも、この訓練プログラムと、今回の実際の学校を使ったプログラムでは条件が違い過ぎて、これまた比較しても意味がないだろう。
また、クリアしたら回収と言うが、クリアしたと言うことは、その時点でほぼ確実にこの三人はいづみに倒されているだろうから、誰がいづみを回収すると言うのだろう?
この制限時間に関する齟齬は、後にも出てくる。このシナリオは、テコ入れのために新規に書き下ろしたのか、既存のものに手を入れたのか不明だが、いずれにせよ練り込み不足のまま撮影に入った感じがする。それでも、エピソードとしてはベスト3に入れて良いくらい面白いんだけどね。
ここでOPになるが、2話まであったバズーカ砲を撃つ合間に「彼女はアイスドール」などの文字が表示される演出がなくなり、かなり短くなる。

Aパートの幕開けも、「SUSPENSE THEME1」がかかって、緊張感が続く……かと思いきや。
いづみが勝手に寝泊りしているビルの外観。これが映るのはこのカットだけか。
そこへ、バイクが一台近付いてくる。

いづみは気付かず、熟睡している。

バイクから降りたのは、いかにも怪しいサングラスの男。
いづみは、引き続き全力で熟睡していた。顔が弛緩して、やや美人度が下がっている。

男はゆっくりと非常階段を上がって行く。ここも、男の目線で描かれていて、緊張感が高まる。
開け放たれた扉の向こうに立つ男のシルエット。

だが、部屋の入り口には足元にワイヤーのようなものが張られていて、それは警報機に繋がっていた。
この演出は、しばらく後に立場を変えて再登場することになる。しゃれた演出と言えよう。

男は気付かずそのワイヤーを切ってしまう。たちまち警報がピピピピピ……と鳴る。驚く男だが、次の瞬間、いづみのナイフが面前に迫り、そのまま壁に体を押し付けられる。
いづみ「あなたは?」
男「五条、いづみだな?」
いづみ「だとしたら?」
男「ハンコ下さい」

男の意外な言葉に、いづみ、険しい顔を緩め、思わず「ええーっ?」と声を出す。男は単なるバイク便だったのだ。
「いづみ」における、最初のコメディタッチの演出であるが、視聴者を上手く引き入れて騙す、見事なシナリオだと感心した。さすが武上純希である。

男の声「バイク便です!」
送り主は恵子で、一瞬、その伝票が見えるのだが、これは恵子の実家の住所などが映っている貴重なデータ。
恵子は港区の元芝町に住んでいるらしいが、当時は実際にそう言う地名があったのだろうか? ま、普通は架空の住所が書かれると思うけどね。あるいは、同じ港区の「本芝」のもじりかもしれない。
いづみの仮住まいは、「湾岸倉庫街」と言うのが正式な住所らしい。ただ、電話番号まで書いてあるが、これはビル全体の番号だろうか? どっちにしても、使われていないビルに勝手に上がり込んで住んでいる人間にちゃんとバイク便が届くと言うのはドラマならではの奇跡である。
細かいことを言えば、バイク便が客に「五条いづみだな」と呼び捨てで話し掛けることもないんだろうけど、これは視聴者をぎりぎりまで油断させる為なのでしょうがない。ちなみにバイク便を演じるのは三上祐氏。

マットレスの上に立ったまま、小包を開くいづみ。
箱の中からは、通学カバンが出て来た。前回の最後、恵子は晴海学園への編入手続きをいづみに渡していたが、今度はそれに続く恵子の世話焼きであった。

また、教科書なども一式同梱されていた。
懐かしそうにパラパラと教科書をめくるいづみ。最後はその真新しい紙の匂いを嗅いでいる。
ここまで恵子がすると言うことは、既にいづみの編入は認められているのだろう。
しかし、カバンや教科書一式、さらに今回の最後にセーラー服までいづみにプレゼントしているが、全部で結構な出費になったのではなかろうか。恐らく自腹を切っているのだろうが、普段、バイトも何もしていない恵子なので、家がかなり裕福なのではないだろうか。……その割に、8話では5万円を手に、妙にはしゃいでいたけど。

さて、その学校へ舞台が移る。朝の登校時間帯。
笙子「アイ、おはよっ」
アイ「おはよー」
マーコ「おはよ」
窓から校門の方を見ている恵子、後ろでは子分の三人が朝の挨拶を交わしている。だいぶ長いことそこからいづみが来るのを待っているのだろう、先に座っていたアイが恵子の背中を指差して二人に何か言っている。
恵子「あいつ、人の親切無視する気ぃ?」

なかなかいづみが現れず、イライラを口にするが、やがていつもの格好でいづみが入ってくる。

私服の、しかも見掛けない顔の出現に、他の生徒たちも目引き袖引きして注目する。
右後ろで指差しているエキストラの女性、ナイスジョブです!

恵子の声「五条いづみが帰ってきた日、学園は戦場になった」
石津のお株を奪う恵子の物騒な予言。ただし、石津と違ってこれは現実になる。

ここでサブタイトルが表示される。

普通なら、いづみが編入生としてクラスに紹介される定番のシーンになるところだが、そんなのは一切なく、一気に授業中になっている。
ま、最初から予定されていたのならともかく、急遽決まったことでもあり、そう言うシーンを撮るにはもっとエキストラが要るし、教師役の俳優だって呼んでこなくちゃいけないと言うことで、思い切ってカットしたのだろう。
中庭には数人の生徒が座ってスケッチしている。美術部と言う感じはしないので、やはり授業中なのだろう。

そのいづみ、編入初日から屋上でサボっていた。あるいは、いづみのクラスが美術の授業なので、こうやってぶらぶらしているのかもしれない。

そこへ、恵子が祥子たちを従えてやってくる。いづみは見るなり、すぐカバンを恵子に放り投げる。

しっかりとキャッチした恵子、「どういうこと?」と言ってすぐ投げ返す。多分、カバンには何も入っていないのだろう。

いづみ、取り損ねそうになる。
普通ならNGだと思うが、よほど時間がなかったのか、撮り直しされずに使われている。

いづみ「今はまだ受け取れない」
と言うか、受け取れてないんだけどね。
いづみはもう一度カバンを恵子に投げる。

受け止めた恵子も、「人の好意は素直に受けとくもんだよ!」と、またいづみに投げ渡すが、いづみはパスするようにまた投げ返す。

意地になったか、恵子もそれをまた返し、それをまたいづみが投げて寄越す。合計、カバンは2往復半したことになる。このカバンのキャッチボールが延々と繰り返されるところは、ちょっと笑ってしまう。
業を煮やした恵子、カバンを叩き付けて、いづみに歩み寄るが、

ちょうどそこへ、「いづみさーん、恵子さーん」と元気良く声を上げながら、女の子が走ってくる。
そう、前回、いづみに助けられた佐織である。彼女の出現に、一瞬、唖然とするふたり。

祥子「あー」
マーコ「あー」
アイ「あー」
後ろの三人も、彼女に気付いてひとりずつ指差して驚きの声を出す。

佐織、三人には「どーもー」と手を振りながら通り過ぎ、ぴょんと飛ぶようにいづみと恵子の間に立つ。

恵子「どうしたのぉ? ○○○の制服着ちゃって!」
佐織「本日ただいまより、晴海学園に転入してきました。三枝佐織です。よろぴくー」
ふざけた物言いで挨拶する佐織。
正直、最初見たときはそのあまりのブリッコぶりにムカッとした管理人だが、慣れるとむしろそれが可愛く見えてくるから不思議だ。彼女の場合、ブリッコと言っても、それはむしろ同性相手に対してであり、健などの異性には逆に乱暴な口の利き方をするので、厭味がないからだろう。
それに、好悪は別にして、主役三人のキャラクターがこれだけくっきり色分けされていることが、この手のドラマにとっては重要なのだ。
ただ、このおばさんっぽい髪型はどうにかして欲しかった……。
なお、恵子の○○○の部分、どうしても聞き取れない。「うちの制服」と言う意味だとは分かるのだが、「まわしの制服」としか聞こえない(後述)。
恵子「よろぴくって、何考えてんのぉ?」
佐織「いづみさんの戦う姿を見て感じちゃったんです。いづみさん、私のお友達になってください! その為に、この偏差値の低い高校に編入してきたんです」
佐織は意外と毒舌家なのだった。

佐織の言葉に背後でアイたちが膨れている。
中盤以降の恵子なら、すぐガツンと佐織の頭を殴っているところだが、ほぼ初対面のせいか、ここでは「このー」と軽く頭を指で押すだけである。
佐織「私、いづみ先輩を罪に落とした男と会ってます。きっといつか、お役に立つ時が来ます!」
佐織は宣言するが、彼女がそれを果たすのは11話である。当初の予定では、45話とか、それくらいの筈だったんだろうが。

だが、いづみは「忘れるの!」と、序盤でちょくちょく聞ける押さえつけるような強い調子で言う。
いづみ「そのことは、誰にも言わずに忘れるのよ」

それだけ言って、クールにその場を去るいづみ。

沙織「素敵〜!」
恵子「あいつ、やっぱり気に入らない!」
対照的な反応を示す二人。
それにしても、今は授業中の筈だが、沙織はこんなところにいていいのか?

その後、改めて下校シーンが出てくるので、やはりさっきは授業中だったのだろう。

特に劇中では説明はないが、ここは旧校舎にある闇学中の秘密委員会室らしい(出典・テレビジョンドラマ1987年3月号)。
物珍しそうに室内を見渡している佐織。旧校舎なので、下は板張りである。無論、セット。
もっと続いていれば、この部屋も何度か出てきたかもしれないが、実際はこの3話のみ。

祥子「会長、何故そんなにいづみに拘るんですぅ?」
マーコ「あいつ来てから厄介ごとばっかりですよぉ」

アイ「きっとあいつ福の神よ」
マーコ「疫病神ぃ!」
アイ「疫病神ってなぁに?」
マーコ「あんたほんとにそんなこと知らないの?」
アイ「いいじゃないのもう」
マーコ「ったく、あったまくるなぁ〜」
アイが、「福の神」と「疫病神」とを取り違えるギャグは、この作品では何度も見られる。
恵子「うるさいなぁ、静かにしてよ!」

祥子「でも会長……!」
尚も言いかける祥子だったが、横から「あたしー、会長さんの気持ち、分かるような気がします!」と、編入初日でこの部屋に来たのも初めての佐織が、堂々と口を出す。
祥子役の山本恵美子さんはなかなか色っぽいのだ。

佐織「あの人は本物なんです。怒る時も戦う時も、きっと泣く時だって真剣なんです。あの人は本気でサバイバルしてるんです。だから……!」
部屋の中を歩きながら滔滔と意見を述べる佐織。マーコなどはその言葉に頷いている。
この物怖じしないところが、佐織の強さである。
恵子「ぴーぴー喚かないでよ、ガキぃ!」
佐織「ガキじゃないもん!」

恵子「本物か偽者か分かったもんじゃない。あたしがきっと確かめてみせる」
と仰る恵子さんだが、前回、バイオフィードバックの超パワーを二回もその目で見てる筈なんだけどね。どれだけ疑い深いのだろう。
だが、既にその時、三人のターミネーターによる実戦プログラムは始まっていたのだ。
まず、ひとりが配電盤を壊して、警報装置や外部との連絡手段を麻痺させる。

別のひとりは、給水タンクに上がり、その中に白い粉を入れる。

「おかしいなぁ」と配電盤を調べに来た警備員は、ターミネーターにガスを噴射されて気絶する。
ちなみに警備員を演じているのは鎌田功さん。「スケバン刑事2」の雪乃さんの運転手・宮本を演じていた人である。

ついで、外の水飲み場で倒れているラグビー部員の様子。
この僅かなカットだけで、学園が恵子たちを除いて無人の状態になったことを表現している、極めて優れた演出である。実際は、運動部員以外の生徒が、みんな水道の水を飲むとは考えられず、こんな簡単には進まないのだけど、視聴者に状況を伝えると言う一点では、これで十分なのである。
リアルにやるのなら、校内にガスを充満させるなどの方法を採るかもしれないが、撮影するのは大変だからね。

中庭の隅で校舎の見取り図を広げて打ち合わせている三人。

ひとりは、わざわざ屋上からロープで外壁を下って行く。
逆にこれなんかは、既に占拠している施設なのだから、わざわざこんな面倒なことをする必要はないのだけど、ドラマの映像的には必要なシーンなのだ。
しかし、これは旧校舎の筈だが、全然そうは見えんな。

窓際でマーコとアイが何やら楽しそうにお喋りしている。
そこへ、スーッと黒い物体が下がってきて……。
しかし、いつも恵子たちはここで何してるんだろう? めちゃくちゃ暇そうなんだけど。

声にならない悲鳴を上げる二人。

恵子「○○○○! 逃げて!」
咄嗟に叫ぶ恵子。ここも、「危ない」と言ってるようなのだが、はっきりと聞き取れない。「あんたたち」かもしれない。

それと同時に、ぶら下がったターミネーターは手斧で窓ガラスを叩き割る。
ただ、その衝撃で窓が開いているので、鍵はかかってなかったようだ。普通に開ければ良かったのでは?

それ以前に、廊下側のドアから残りの二人が侵入しているのだから、そもそもぶら下がる必要はなかったのである。あくまでこれはアクションの演出上の問題なのである。

他の四人は逃げようとしたり、立ち竦んだりするだけだが、さすが会長の恵子は、うろたえずにファイティングポーズを取る。

果敢に立ち向かうが、彼らの敵ではない。たちまちねじふせられる。

なお、無理矢理体を起こされる時、チラッと下着が見えるところに土田由美ファンは燃えねばならない。

彼らは恵子たちの親指をプラスチックのバンドのようなもので縛ると言う、リアルな方法で拘束して行く。

その後、佐織の体を立たせて、引き寄せる。
佐織「何するのよーっ、やめてよ」

手斧を振り上げたので、思わず悲鳴を上げる佐織たち。だが、振り下ろされた手斧は、佐織の指バンドを正確に断ち切っていた。しかし、わざわざ締めたバンドをすぐまた自分たちで切ると言うのは、いかにも無意味な行為に思える。
なお、一瞬背後に映る黒板には、「たかしのバカタレ」と言うような文字が見える。

佐織「何するのよー」
タ「五条いづみを呼べーっ、門を入ったら11分09秒の勝負だとな」
佐織「11分09秒?」
タ「外部に漏らしたら……」

ターミネーターは、そう言いながら手斧をそばの机に叩き付ける。で、何故か机の上に、カマキリがいるのである。当然、一刀両断される。玩具だろうが、妙にリアルなので、本物だったらやだなぁ。
正直、カマキリは別に要らなかったと思うんだけどね。単に机に打ち下ろすだけで十分脅しになっただろう。

だからそれを見た佐織のビックリ顔が、(なんでこんなところにカマキリが……?)と、違うところに驚いているようにも見え……んか。

ついで、場面はバーガー・イン。健がひとりでグラスを磨いていると、佐織が駆け込んでくる。
バーガー・インの向かい側が見えるが、このアングルが出てくるのは全編通してこのカットだけだろう。
なお、BGMには「無口にならないで〜♪」と言う「セーラー服反逆同盟」15話でもA-JARIが歌っていた曲が流れている。

二人が劇中で顔を合わすのは初めてだと思うが、既に顔見知りになっていたのか、佐織はいきなり「いづみさんは? いづみさんは来なかった?」と聞いている。
健も普通に「いやぁひと勝負してよ、ハンバーガー持って行きやがったあいつ」と応じているから、2話と3話の間に、佐織はここへ遊びに来たことがあるのだろう。
佐織「どこ行ったのぉ!?」
健「倉庫街じゃねえかな」
健の言葉を最後まで聴かず、佐織はまたすぐ飛び出して行く。
健「あ……」
なお、健の台詞で、いづみがちょくちょくバーガー・インに顔を出していることも推測できる。また、健の台詞だけだが、いづみがビリヤードをしたのはこの一回きりである。

さて、再び闇学中の「部室」。部屋にはターミネーターがひとり残って監視している。
恵子が疲れたように「あーあー」と、体を横にする。

恵子(小声で)「マーコ、なんか話しなよ。なんでもいいから」
マーコ(大声で)「いづみの奴来るかなぁー、ね、あいつ見かけによらず遅いと思わない? ね、ね、ね、聞いてんの祥子ぉ?」
甲高い声でマーコが喋りだしたのを見て、恵子はアイと祥子に指示して彼女たちの手を自分の顔の前に持ってこさせる。歯でバンドを噛み切ろうという作戦である。

祥子「聞いてるよー、なにぃ?」
マーコ「あいつ○○こんでんのかなぁ」
恵子はターミネーターの反応を窺いながら、懸命にバンドを噛む。

祥子「いったぁいーっ」
恵子に指を噛まれたのか、顔を歪める祥子。
アイ「やっぱいづみの奴、い福の神だよ〜」
マーコ「疫病神!」
こんな場合でも訂正せずにいられないマーコ。

だが、ここで、
「そのバンドは、人の歯くらいでは切れない」
と、ターミネーターさんが無慈悲な一言。そう、とっくに気付いていたのだ。
その言葉にぐったりしてしまう恵子たち。
ある意味、親切なんだけどね。このシーン、一瞬だけターミネーターが人間臭さを出しているところといい、恵子たちの努力が水泡に帰すおかしさといい、ライターのセンスの感じられるシーンである。

祥子「会長なんとかしてよ〜」
恵子「知〜らないっと」
祥子「会長ー」
恵子「も、知らないって言ってんでしょう! ふーうー」
溜息をついて目を閉じる恵子。

さて、いづみはその頃、恐らくあるビルの屋上だと思うが、コンクリートの上に横になっていた。
ここは、五十嵐いづみさんが実に綺麗に撮れているカットだ。

そこへ佐織の「いたーっ」と言う声がする。

佐織「はぁ、はぁ、いづみさん、大変大変!」
膝小僧もあらわに駆け寄る佐織。
佐織「学校に変な兵隊が来て恵子さんたち人質にされちゃったんです!」
しかし、いづみは何の反応も示さない。佐織は、海側に移動して、
佐織「いづみさん! 門に入ったら11分09秒の勝負とか、なんか訳の分かんないこと言って……とにかく、とにかく早く来て下さい!」

佐織は必死に訴えるが、いづみの答えは予想外に冷たい。
携帯コンロの上のポットから、カップにコーヒーをそそぎ、
いづみ「あたしには関わりのないことよ」
佐織「嘘、嘘でしょう? いづみさんはそんな人じゃない。いづみさんは本物よー私には分かるもん!」
いづみ「来るところが違うわ。警察へ行けばいい!」
いづみの言葉に、信じられないような顔をする佐織。
だが、そこへ「ううわ、ふっ、ハックション!」と、ややわざとらしいくしゃみが聞こえる。

くしゃみの主は当然、藤原。さすがに、いづみの寝泊りしている場所は既に把握しているようだ。
藤原「俺でよければお役に立つぜ」

悠々と近付いて、ポットの蓋を開け、覗き込むようにして、
藤原「おおー、いい香りだ、あーコーヒーかぁ、それとも、犯罪の匂いかぁ?」
藤原は、コーヒーには目がないのだ。
藤原「聞かせてもらおうか、お嬢さん」
佐織「あのー」
口ごもる佐織。もっとも、この場合、警察に訴えるのが最善なんだけどね。警察が来れば、ことが公になるのを嫌う組織=石津はさっさと作戦を中断させていただろう。もっとも、そんなことは佐織には分からない。
しかし、藤原は、佐織がいづみが有罪と言う証言をした少女だと言うことに気付かないのだろうか? ま、あれから3年も経っているし、髪型も全然違うので、すぐには気付かなかったのだろう。

いづみ「ブルマンよ!」
いづみ、助け舟を出すように、カップを突き出して言う。
いづみも、コーヒーには拘りがあるようだが、劇中でコーヒーを入れたり買ったりするシーンは見られない。そのコーヒーも施設から逃げ出すときに持ってきたものなのだろうか。

藤原「いやぁ〜」
と、すぐ幸せそうに口を付ける。

だが、その瞬間、いづみは佐織を引っ張って逃げ出す。

思わず立ち上がった藤原、カップを落として熱湯が手に当たる。
藤原「あちぃ! おおーい!」
いづみを追いかけようとするが、今度はポットを派手に蹴飛ばしてしまい、ズボンをまくり上げて「あちー、あつつつ」とスネをさするのだった。
この後、藤原が学校へだいぶ遅れて到着したのは、火傷の治療のため、病院へ行っていたのかも知れない。
こうして成り行き上、いづみは佐織に請われるまま学校へ恵子たちを助けに戻るのだが、藤原が現れなかったら、いづみはどうしていたのだろうか? 最終的には佐織の熱意に負けて結局学校へ行くことになっていたのかもしれない。
ただ、いづみとしては組織のことは何でもいいから知りたいと思っていた筈で、佐織の言葉を聞いてむしろ積極的に事件に関わろうとするのが普通に思えるのだが。
時刻は4時。

恵子たちは待ちくたびれた様子である。
マーコ「佐織、いづみ見付けられないのかなぁ……」

だが、ここでやっといづみと佐織が正門に走ってやってくる。
監視していたであろうターミネーターたちは、即座にその出現を知り、「部室」に集まって地図を見ながら打ち合わせを始める。

恵子もすぐに起き上がり、「来た!」とつぶやく。

門の前で話す二人。
いづみ「今までの捕虜奪還のタイムは11分09秒」
佐織「えー?」
いづみ「11分を越えても反応がないときは、警察に。それまでは何があっても何が聞こえてもここを動かないで」
佐織「でもー」
いづみ「それも大事な作戦の一部よ」
佐織「はい」
いづみはそう言って佐織を納得させる。だが後の展開を見ると、それは単に足手まといの佐織をその場に留まらせるための方便に過ぎなかったようだ。
ただ、11分を過ぎてから警察に知らせても、手遅れだと思うんだけどね。ま、いづみは時限爆弾が仕掛けられようとは思っていなかったのかもしれない。

さて、いづみの登場を知ったターミネーターたちは、用意していた時限爆弾を取り出し、タイマーをセットする。
長方形の箱に入ったタイマーには、小さなガスボンベのようなものが繋がっている。

このタイマー部分もドラマに登場するものとしては、なかなか本物っぽくて雰囲気がある。

ターミネーター「いづみのテスト及び奪還作戦に移る。いづみの能力がダミーより劣った場合、奪還回収の必要はない。破壊する」
リーダー格がそう説明するのだが、ダミーは(失敗したけど)21分で人質に到達している。しかるに、タイマーはいづみのベストタイムである11分09秒にセットされている。これだと、ダミーより早く辿り着いたとしても爆発してしまう場合もあるのではないか? どうもこの辺はシナリオが混乱している。
また、本物の爆弾を仕掛けると言うのもやり過ぎだろう。彼らはショッカーのような「悪の組織」ではないのだから、関係のない恵子たちまで殺すと言うのはどうも……それに、そんなことしたらどう考えても大騒ぎになって、彼らの存在が明るみに出るおそれもある。だから、時限爆弾はあくまで小道具に過ぎず、時間になっても恵子たちを殺傷するほどの爆発は起きなかったかもしれない。

そしてタイマーのスイッチが入れられる。秒針の動くカチカチと言う音が響く。
マーコ「会長ーっ」
アイ「あいつらほんとにネジが吹っ飛んじゃってるよ」
祥子「いづみぃ来てくれよーっ」
アイの言うネジとは、「頭のネジ」のことだろう。
うろたえる部下たちを恵子は「静かに!」と黙らせる。

恵子「来れるもんか、あいつ来れるもんか……」
念じるようにつぶやく恵子。


いづみ、一階(だと思うが)の上部の窓を開けて、廊下へ飛び降りる。
これは外に脚立でも立てているのだろうが、結構高さがある。足元にマットでも引いていたかもしれない。

リノリウムの廊下を足音を気にせず走ってきたいづみ、ある場所で急に止まる。
足元にテグスのようなワイヤーが張ってあり、その一方は柱の陰の手榴弾のピンにつながっていた。
冒頭のバイク便の男と違い、いづみはこんなものには引っ掛からない。

上の画像の向かって右側へ移動し、台に置いてある彫像から出ているワイヤーに手を伸ばし、クスッと言う感じで笑う。
これは、手榴弾の反対側に重石(おもし)として、この彫像が置いてあると言うことなのだろうか? ただ、画面左側に行くのならともかく、ここでは右側に移動しているので混乱を招く。いづみが手を伸ばす意味も、何回見ても分からない。

ともあれ、いづみはルートを変えて、階段を登っていたが、そこにも足元と顔の位置、二つのワイヤーが張られていた。しかし、目の前に張ったらすぐ気付かれるので、足元だけでいいんじゃないの?

いづみは後ろの踊り場の隅にあった消火器を取り、さっきの場所に引き返すと、ワイヤーに引っ掛かるように消火器を滑らせるようにして放り投げる。

消火器がワイヤーに当たり、爆発が起こる。
ここは本当の校舎で撮影しているので、消火器の映像に炎の映像を合成しているだけだが。

その音に、ターミネーターたちも動き出す。
ターミネーター「チェック!」
リーダー格の言葉に、見取り図を持った男が部屋を飛び出す。
このタイミングで「エスケイプ!」が流れ出す。

いづみ、今度は窓から逆に中庭へ飛び降りる。
撮影は一階だが、二階から降りている設定だろう。ここも五十嵐さんが自分で演じている。

ターミネーターが調べに来ると、いづみが白煙をまとって倒れていた。この位置からしても、二階以上から落ちた、と言うことだろう。いづみは爆発の衝撃で外へ放り出されたと言う芝居をしているのだ。

カメラは、いづみが体で隠している地雷と、いづみがパッと目を開く様子を映す。

ターミネーターはスティック状の武器を手にゆっくりいづみに近づいてくる。

途中、地雷に気付いてそれを避けながら歩く様子もしっかり映される。
この地雷についても、彼らが仕掛けたのか、いづみが仕掛けたのか、どちらとも取れるような描き方がされていて、解釈に困る。常識的に考えれば、彼らが設置しておいたものだろうが……。

彼はいづみの側に来て、足で彼女の体を起こそうとするが、いづみはすぐ起き上がって反撃してくる。

二人は地雷のある危険な場所で激しく格闘する。

いづみが相手の突き出した武器を掴む。と、ターミネーターはギクッとしたようにゆっくり足元を見る。

靴が地雷を踏んでしまっていた。マスク越しに動揺する男の目が見える。

いづみ「地雷は体重を外した瞬間爆発する……」
いづみはゆっくりと体を起こし、相手から離れる。去り際、敬礼のような別れの挨拶を残して。
このいづみの台詞も、まるでいづみが地雷を仕掛けたように聞こえて混乱させられる。ま、これは視聴者に説明するためのものだろうが、いづみの台詞に男が驚いているようにも見えるので、とにかく断定がしにくい。
しかし、やっぱりいづみがわざわざ地雷を持ち込んで設置したと言うのは考えにくく、ターミネーターが仕掛けておいたと言うのが正しいのだろう。相手の罠を逆用して、スマートに敵一人を無力化したこの戦術は、全編を通してもスカッとする名シーンである。これによって、このターミネーターは退場となる。
ただ、地雷がどれほどの威力か不明だが、コンクリートの壁を突き破るほどの彼らが一歩も動けなくなると言うのはちと情けない。完全武装しているのだから、思い切って横に飛んでみれば、助かったのではないか? あるいは、持っている棒で靴の代わりにボタンを押し、ゆっくり体を離すとか……。

正門の外に立つ佐織は、腕時計とにらみっこしながら、居ても立ってもいられないと言う様子。


時間は刻々と過ぎて行く。
マーコ、アイ、笙子の不安そう表情と、恵子の毅然とした顔を映して行く。

ここでCMへ。同時に「エスケイプ!」が終わる。

校舎内に戻ってきたいづみ、女子トイレの前を通り過ぎると、そこから敵が斧を持って現れる。
ま、こういう場合でもなければ、堂々と女子トイレに入れないだろうから、と言うことだったのだろう。

いづみは攻撃をかわしつつ、肘打ち、左ミドルキックを綺麗に決める。

そのまま攻め続ければいいのに、いづみは何故か横のドアから教室の中へ隠れてしまう。
相手の気配を窺っていたが、

意表をついて、敵は教室の後ろの壁、つまり男子トイレの壁を壊していづみに襲い掛かってくる。
派手なシーンだけど、さすがにコンクリートの壁を素手で壊してしまうと言うのは強過ぎるだろう。バイオフィードバックを発動させたいづみに匹敵する。……だったら、わざわざバイオフィードバック戦士を苦労して作らなくても、彼らターミネーター兵士で十分間に合うんじゃないの?
机の中に突き飛ばされるいづみは、さすがにスタントが演じていると思われる。
2話の予告編では、この中で三人のターミネーターと同時に戦っていたが、前述したようにそんなシーンは存在しない。

いづみ、ここでサバイバル・ソーを取り出す。

激しく揉み合っているうちに、そこにあったラジカセのスイッチが入り、音楽が流れ出す。
何故か、オクラホマミキサーが……。
この緊迫シーンに、よりによってオクラホマミキサーを流す選曲のセンスが分からない。第8話のクライマックスで突然鳴り出す「ウィリアム・テル序曲」と並んで、首を傾げてしまうシーンである。

その曲は、彼らの耳にも届いていた。残り時間は5分。

佐織、耐え切れずに思わずどこかへ、無論警察だろうが、走り出そうとするが、結局思い止まって校門に戻る。

いづみは恵子たちのところへ近付いていたが、敵の気配を感じたのか、生物室のようなところへ入る。
しかし、よく考えたら、いづみ、恵子たちの居る場所が分かるのだろうか? まだ編入してきたばかりで校内には全く不案内だと思うのだが……、ま、ここへ来る途中、佐織から聞いたのだろう……って、佐織も転校してきたばっかりだったなぁ。
いづみ、空の水槽に入れられているモルモットにちらりと目をやる。

しかし、いづみの背後のドアが開き、三人目のターミネーターが。

いづみもすぐ気付き、素早く物陰に隠れつつ移動する。
そこで、顔の前に垂れかかる長い髪を首を振ってうるさそうに払う仕草を見せる。

と、ちょうど目の前の床に、誰かの落とした髪留めゴムが……。
さすがにそんな偶然はない。いづみ自身がポケットから取り出すほうがよっぽど自然だろう。

それはともかく、動きやすいポニーテールになったいづみ。

敵は、銃から白いガスを噴射する。

いづみは咄嗟に避けるが、代わりにハムスターたちがガスを浴びて、体を痙攣させる。ここ、どうやって撮ってるのか分からないが、ハムスターたちがリアルに体をピクピクさせているのがちょっと怖い。

敵は銃を構え直す。ここ、銃でいづみに動かないよう指図しているようにも見えるのだが、次にはすぐガスを噴射しているので、特にそう言う意図はなかったのだろう。

しかし、いづみはまたしても飛びのいて、同時に手にした二つの薬品の瓶を相手の足元に投げる。たちまち炎が噴き上がる。

男は構わず再びガスを噴射するが、気化した薬品のせいか、火炎放射器のようになる。

だが、炎は男の左手に燃え移り、「うっ」と言う声を放ちつつ、そのまま窓から外へ飛び出してしまう。
1話に続いてのファイヤーアクションで、スタッフの気合の入り方がよく分かる。

ただ、その後、いづみが苦しがっているハムスターをチラッと見るカットがあるのだが、これって必要だったかなと疑問に感じる。ハムスターは死んでないよと言うことを(視聴者に)アピールしたかったのだろうか?

残り3分。恵子のアップになると同時に、BGM「ESCAPE」が流れ出す。

いづみ、階段を上がっている。
ここ、背後に映る向かい側の校舎の一階に、人がいるように見えるのだが、学校関係者だろうか? どういう状況で撮影しているのか不明だが。

やがて、いづみは恵子たちの部室へ到着する。だが、教室で一度倒した敵が復活して再び襲ってくる。

突き飛ばされ、床の上を滑るように倒れるいづみ。敵は「うぅん」とくぐもった声を出し、筋肉をほぐすように肩を動かす。

いづみ、男の腕を捉えようとするが、その怪力で吹き飛ばされる。
いづみ、ヴィーナスっぽい石膏像にもたれかかるが、すぐにその場を離れる。直後、男が斧で像を叩き割る。

激しい戦いを思わせる物音に、恵子以外の三人は顔を伏せる。

いづみ、うつ伏せになった男の体を机(テーブル?)で押さえ、馬乗りになって首を絞める。
が、ガスマスクが外れ、その反動でいづみは後ろにひっくり返る。

いづみ、その机の脚で迫ってくる男を突き放し、机を蹴る。

脚の先が顔に当たったか、よろめく男。いづみは机の脚を持ち、思いっきり男をぶん殴る。
ここも、ワンカットですべて五十嵐さん本人がアクションをしていて、感心する。

男はそのまま階段を派手に転がっていき、踊り場で動かなくなる。

あとは、恵子たちを助け出すだけ……だが、すんなりといづみを入れさせないのがシナリオの巧みなところ。

ドア越しにいづみの姿を見て、思わず顔を起こす恵子。しかし、何故かいづみはそのまま姿を消してしまう。

じっとドアを見詰める三人。祥子が唾を飲み込む。

恵子「何してるのよ、いづみ、早く!」
気丈な恵子も思わず叫ぶ。

だが、次の瞬間、思い掛けないところからいづみが現れる。
そう、屋上からロープを垂らし、それにぶら下がって窓を蹴破って入ってきたのだ。

と言っても、映るのはほんの一瞬で、実際はただぶら下がっていただけだろう。
しかし、あの短時間でそんなややこしい真似が出来るとは到底思えないのだが。そもそもロープはどこにあったのだろう?

いづみは、爆弾があることを予め知っていたのか、すぐスイッチに手をやる。爆弾のことは佐織も知らない筈なのだが、捕虜奪還プログラムではよくあるケースなのだろうか。
残りは20秒。しかし、停止スイッチが複数あって、いづみは迷う。
ま、持ち運びやすいものだから、そのまま窓から放り投げるのが確実だったろうが。
緊迫の数秒が流れる。

恵子「早くぅ!」
思わず叫ぶ恵子。

その声に押されるようにして、いづみはひとつのスイッチを切る。
無論、爆発したらドラマが終わってしまうので、無事解除される。タイマーは7秒であった。

助かって、ぐったりする恵子たち。

いづみは無言で彼らに近付き、マーコ、アイ、笙子の順にナイフでバンドを切って行く。
恵子「あんた今頃何しに来たの? あたしたちだけだって逃げられんだからっ」
こんな時でも強がる恵子、可愛い……。
だが、いづみが恵子の足を解放した時、

天井を突き破ってさっきの敵が再び現れる。
恵子「キャアーッ!」

いづみはひとり顔色を変えなかったが、ここで頭を振って髪を解くと、何故かこのタイミングで「バイオフィードバック」が発動する。石津の台詞と共に、いつもの発動演出が流れる。石津の台詞は今までと変わらず、よって発音がおかしいままである。次にいづみが「発動」するのは5話だが、そこでは石津の台詞はリテイクされたものが使われている。
ターミネーターは、タイムを更新したいづみを奪還回収する任務もある筈だが、怒りで我を失っているのか、斧でいづみを殺しにかかる。

いづみはその猛攻をかわし、腕を取り、

斧を手でバキッと折ってしまう。
ただ、いつものようにフィルムが加工されている上、似たような色が多いので、テレビで見ている分には何をしたのかはっきり分からなかった。

いづみはそのまま右肘を相手の顔面に叩き込む。

いづみ、鬼のような形相で斧の一部を床に叩き付けると、

猛然と飛び掛かって、机を支えにして両足で男の体を蹴り飛ばす。さすがにこれはスタントだ。

男はロッカーにぶちあたり、そのまま崩れ落ちる。
その前に立ついづみ。
画像ではわからないが、動画で見ると俳優を吊っているワイヤーがはっきり見えてしまうのが惜しい。いづみがそれを隠すように画面の真ん中に立つが、ワイヤーがロッカーの上に置いてあるバッグに当たって、バッグが動いてしまうと言う不細工なことになる。

不死身のターミネーターも遂にダウンしてしまう。
しかし、そもそも彼ら、いづみとは系統は違うが同じく石津の作り出した超兵士だったのだろうか?

恵子「あんた……」(振り向いて)「行くよ!」
だが、いづみ、「待って!」と恵子を止める。

いづみ、ドアの横に立ち、サバイバル・ソーを引っ張ってから、
「下がってぇ……下がりなさい!」
と、強い口調で命じる。恵子たちはその剣幕に、とりあえず従う。
いづみのこのきつい喋り方は、序盤でよく見られるものだ。

それを待ってから、いづみはサバイバル・ソーのリングを投げて、ノブに引っ掛ける。

いづみがノブを引っ張ると、派手な爆発が起き、ドアが廊下に倒れる。
そう、敵はこのドアにトラップを仕掛けておいたのだ。
いづみがわざわざターザンのように窓を突き破ったのも、敵がわざわざ天井から降ってきたのも、この為だったのだ。
最後の最後まで観客を飽きさせない、見事なシナリオ&演出と言えよう。
ついでに、佐織が門の前にいたことが実際に何か役に立っていれば、完璧だったのだが、結局佐織には見せ場はなかった。

いづみ、穏やかな顔になって「行くわよ」と言い、さっさと部屋を出て行く。
あまりに非現実的な出来事の数々に、さすがの恵子も言葉が出ない。

佐織と合流し、歩いている恵子たち。先程、いづみが指のバンドを切る前に敵が現れたので、まだ恵子の手は自由になっていない。
恵子「いてっ、いててててて、いたいっ痛い、もーっ」
祥子たちが外そうとするが、取れない。恵子は仕方なく「ねー、切ってよー」と前を行くいづみに話し掛ける。

いづみは無言で恵子の後ろに回り、ナイフでバンドを切る。
恵子「あいつら一体何者なの? あなたとどういう関わりがあるの?」
いづみ「あたしに関わらないで! あなたを傷付けたくないの」
恵子「カッコつけんじゃないよ」

恵子「一人きりで生きてきた奴なんかいない。みんな一生懸命生きてるんだ!」
いづみの背中に恵子が訴える。
もっとも、いづみの場合、幼い頃に両親を亡くしてから、ほんっっっとに一人きりで生きて来たみたいなんだけどね。

恵子「誰も傷付けずに生きていける人間なんているもんか!」
恵子は尚も叫ぶが、いづみは何も答えず去って行く。

恵子、佐織が持っていたいづみのカバン……自分が贈ったものだが、それをつかむと、いづみに向かって放り投げる。
恵子「来るんだよ学校!」
個人的にとても好きな台詞で、出来ればここでスパッと終わりにして欲しかったが、実際はまだ数シーン残っている。

すっかり夜になってから、赤色灯をつけた車が晴海学園にやってくる。

助手席から藤原、運転席から東大寺(原島達也)が降りてくる。
藤原「爆発はどこだ? どこで戦争が始まったんだ?」
だが、学園周辺は何事もなかったように静かである。既に、石津の命令で全ての痕跡が消されてしまったのだろう。
東大寺はほとんど台詞はないが、「テレビジョンドラマ」ではレギュラーとして扱われている。
藤原「ノー(もー?) すべてうっちゃってくればガセネタか!」
残念がる藤原。しかし、佐織はそんな物騒なことは口にしていなかったし、あれからここに来るまであまりに時間がかかり過ぎている。あるいは、周辺住民から爆発音のようなものが聞こえたと通報があったのかもしれない。どっちにしても、遅過ぎるんだけどね。

石津「これ以上の深追いは、逆にプロジェクトを白日の下に晒す危険性があるなぁ」
グラスを片手にいつもの独り言。

石津「しばらく泳がせてみるか。どう動き出すか、それもテストと言えよう」
最後、コーンとグラスを指で弾く石津。
顔を隠さないと喋れんのかお前は?
ところで結局、いづみへの抹殺指令は撤回された様子である。

翌朝、何事もなかったように平和な登校風景。昨日の痕跡は跡形もないようだ。
しかし、火災の起きた実験室や天井とドアがぶっ壊れた部室、後ろの壁に大穴が開いた教室及び男子トイレなど、一晩で修復するのは大変……と言うか、不可能だと思うんだけどね。
数人の生徒は寝ていただけだからまだしも、警備員ははっきりと襲われているのだから、彼の口から事件が明るみになってもおかしくないところだが、佐織同様、口止めされたのかもしれない。
恵子、正門を見通せるところへ陣取って頬杖を突いている。
佐織も彼女の前を行ったり来たりしながら、
「いづみ先輩来るでしょうかぁ? いづみさん来なかったらどうしよう……」と、不安そう。
また、恵子の前を通る生徒は(全員ではないが)男女問わず恵子に頭を下げて挨拶している。闇学中の会長として、晴海学園でも一目置かれているらしい。

佐織「わざわざ偏差値の低い晴海学園に移って来た意味がありません!」
恵子「ちょっとうるさいなぁ、ガキぃ!」
佐織「だってだってだって心配でー」
佐織、恵子の腕を掴んで激しく揺する。

恵子「も〜あのねえ……」

この時、他の生徒たちが登校した後で、いづみのいつものスタイルが遠く見える。
同時に五十嵐いづみの「さよならの迷路」が流れ出す。これが使われるのはこのシーンが最初だっけ?
佐織「ああーっ!」
佐織、すぐ立ち上がって手を振りながら駆け寄る。

佐織「いづみ先輩ーっ、今日はいづみ先輩うれしー○○○○と来られるなんてほんっとにうれしーっ! いづみさん、良かったーっ」
いづみと腕を組み、早口でまくしたてる佐織。何言ってるのか良く聞き取れない……。
恵子、その様子を冷ややかに見ていたが、

立ち上がって、用意していた紙袋を放り投げる。
恵子「おーら」(?)
ここも、序盤の屋上のカバン投げシーンと対になっている。

いづみも硬い表情のまま受け取る。
いづみと恵子が本当に打ち解けるには、もう少し時間がかかるようだ。

恵子は自分のカバンを持ち、さっさと行こうとするが、振り向いて「取っとけ」と一言。
そして顎を上に向け、澄ました感じで校舎に入って行く。

佐織「なんだろう?」
いづみはすぐカバンの中身を出す。それは晴海学園の「ニッケ女子通学服」であった。
佐織「うわーっ」
……うん、ひょっとして、今回、恵子が佐織を見たときに発する台詞は、「どうしてニッケの制服着てるの?」だったのかな(……と思ったけど、やっぱり違うみたい)。

佐織「うわー素敵、セーラー服だぁー」
感嘆の声を放ち、いづみの体にあてがってみる佐織。

佐織「いづみ先輩似合います、絶対似合います。うわー素敵ぃ!」
いづみ、ちらっと校舎の方、つまり恵子のいる方へ視線をやってから、佐織ににっこり微笑んで見せる。可愛い。
このラストシーンではいづみは一切台詞がないが、他のメンバーばっかり喋っていづみは無言と言うシーンは、6話などでも見られる特徴的な演出で、いづみのキャラクターをよく表している。
なお今回のEDから、クレジットの文字の大きさと位置が変わる。いづみたち最初の三人はそのままだが、湯江健幸氏以降は、スタッフも含めて小さくなり、右下へ移動している。

左が2話まで、右が3話以降。
タイトルバックの映像が良く見えないからと言う配慮だろうか。

ただ、その修整作業の過程でか、挿入歌の「エスケイプ!」が「エスケープ」と誤記されると言うミスが発生している。
これは次の4話でも直されず、5話でやっと「エスケイプ!」に戻る。
予告編だが、映像的にはほとんど本編と差はない。

唯一、恵子がいづみと抱き合うようにして地面を転がるシーンが、本編テイクと異なるくらいか。
今回の掛け合いも、恵子と佐織の二人。
佐織「あっ恵子さん、どこ行くんですかぁ?」
恵子「いづみの過去を探しにさ」
佐織「私も連れてって下さい!」
恵子「ガキは寝てな」
佐織「ガキじゃないもん!」
恵子「次回、少女コマンドいづみ、『おかしな二人、潜入』、見ねえと承知しねえかんな!」
さて、今回は武上純希の素晴らしいシナリオと、気合の入ったアクションの数々で、学校を舞台にした秀逸なエピソードになっている、と思う。個人的にはベスト3に入るエピソードである。
なのに、
なんで視聴率が7.9%なんだよ!
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